ソールズベリー大聖堂
ソールズベリー · GB
英国最高123mの尖塔がそびえる、 マグナ・カルタ最良写本を守る統一様式の大聖堂
イングランド南部ウィルトシャー州ソールズベリーに建つ大聖堂。 1220年着工、 わずか38年で主要部を完成させた英国一の様式統一性を誇り、 マグナ・カルタの現存4写本のうち最良の一葉と1386年製の世界最古級の現役機械時計を所蔵する。
ベストシーズン・ベストタイム
クローズの芝生と新緑が大聖堂と対照を成す、 旅行者が増え始める前の落ち着いた最盛期
★★★★★
日照が長く尖塔ツアーや屋外イベントが充実するハイシーズン、 ただし混雑覚悟
★★★★☆
黄葉した境内と斜光が中世石材を温めて見せる、 写真愛好家に最適な穴場期
★★★★☆
降誕節合唱礼拝とロウソク照明の聖夜が独特の幻想空間を生み出す、 寒さは厳しめ
★★★☆☆
見どころ TOP 3
1.英国最高123mの大尖塔
1330年に完成した中央交差部の大尖塔は404フィート(123メートル)。 リンカーンとセント・ポール旧大聖堂の尖塔が16世紀に崩落して以来、 英国の聖堂建築では最も高い尖塔として4世紀近くソールズベリーの平原を見下ろしている。
境内クローズの北西芝生から南東方向を午後の光で
2.ランセット窓が連なる身廊
アーリー・イングリッシュ・ゴシック様式を代表する細長いランセット窓と、 暗色のパーベック大理石で組まれた束柱が支える3廊等高の身廊。 天井高25mの軽やかな空間は、 短工期ゆえに様式が一つに統一された中世英国大聖堂の希少例である。
中央扉口から内陣方向に縦構図で広角レンズを使う
3.マグナ・カルタの最良写本展示室
1215年に署名されたマグナ・カルタの現存4写本のうち最も保存状態の良い一葉を所蔵する展示室。 チャプター・ハウスに隣接した独立空間に置かれ、 英国憲政800年の起点を当時の羊皮紙と中世写字で間近に見ることができる。
展示室は撮影制限があるため、 入口外の説明パネル前を縦構図で
物語・伝説
こんな人におすすめ
現地で知るべき豆知識
- 1.入場は寄付制が中心で、 公式サイトで案内される推奨寄付額を払うとセルフガイドのまま自由に堂内を回遊できる。 別途有料の塔頂(タワー)ツアーは事前予約必須で、 332段を登ると尖塔基部とロンドン方面の眺望が広がる
- 2.マグナ・カルタは独立した展示室にあり、 ガラスケース内に常設されているが、 強い光を避けるため照度を絞っており、 入場後すぐに見るより堂内見学の後半に回した方が混雑が緩和される時間帯がある
- 3.1386年製の機械時計は身廊北側の床に置かれ、 文字盤を持たず鐘で時を告げる原型を保つ。 時計の前で動作解説のパネルを読みつつ、 ちょうど正時前に立てば打鐘機構の動きを目の前で見られる
訪問情報
- アクセス
- ロンドン・ウォータールー駅からサウスウェスタン鉄道で約1時間半のソールズベリー駅着、 駅から徒歩約10分。 ヒースロー空港からは車で約1時間半、 ストーンヘンジ経由のバスツアーも多い。
- 所要時間
- 堂内主要部と回廊で1時間半、 塔頂ツアー込みで2時間半が目安。
- 予算目安
- 推奨寄付 大人£10前後、 塔頂ツアー大人£17.50前後、 ロンドン往復鉄道£40前後。 (2024年時点)
周辺観光
車30分のストーンヘンジ(世界遺産)と組み合わせれば先史と中世を一日で巡れる定番ルートとなる。 徒歩圏内のオールド・セーラム遺跡は前身の城塞都市跡で、 大聖堂移転前の主教座の輪郭をたどれる。 ソールズベリー博物館とモンペッソン・ハウスはクローズに隣接し、 中世都市の文化を一体で体感できる。
詳しく知る
時間のある方向けの詳細情報。
年表
- 1092年
旧大聖堂奉献
現在地の北約3キロのオールド・セーラム旧大聖堂が奉献される、 ソールズベリー教区の主教座の起源となる
- 1197年
移転計画始まる
司教ハーバート・プーアが、 聖職者と駐屯軍の関係悪化と給水困難を理由に主教座の移転を求める
- 1220年
礎石を据える
4月28日、 ソールズベリー伯ロングスペー夫妻が現在地で新大聖堂の礎石を据え建設が始まる
- 1258年
主要部完成
わずか38年で身廊・翼廊・聖歌隊席が完成、 中世英国大聖堂で異例の様式統一を実現する
- 1263年
チャプター・ハウス完成
司祭会議場のチャプター・ハウスが完成、 後にマグナ・カルタ写本展示の隣接空間となる
- 1330年
大尖塔完成
中央交差部に123メートルの大尖塔が完成、 後に英国の聖堂建築で最も高い尖塔となる
- 1386年
機械時計設置
現役で稼働する世界最古級の機械時計が大聖堂に設置され、 オリジナルの部品の多くが今も残る
- 17世紀
レンが補強設計
傾きが目立った中央柱の補強をクリストファー・レンが設計し、 構造の長期保存に道を開く
- 1790年
ワイアットの大改装
ジェームズ・ワイアットが旧ルードスクリーンの撤去や鐘楼の解体を含む大幅な内部改装を行う
- 19世紀後半
スコットの修復
ジョージ・ギルバート・スコットが天井の中世風装飾画を加え、 大尖塔を鉄筋で内部補強する
- 1985-2023年
外部修復プログラム
37年に及ぶ大規模な外部修復が2023年に完了、 長年聖堂を覆っていた仮設足場が撤去される
- 2008年
奉献750周年
1258年の主要部完成から750年を記念する祝祭が大聖堂全体で行われ、 国際的に注目を集めた
歴史をもっと深く
ソールズベリー教区(ディオセシス)の主教座は、 もともと現在地から北約3キロの城塞都市オールド・セーラムに置かれ、 1092年に旧大聖堂が奉献された。 1197年、 司教ハーバート・プーアが、 聖職者と駐屯軍の関係悪化、 給水の困難、 強風による礼拝阻害などを理由に移転を求めたが、 実際の移転は弟リチャード・プーア司教の代に持ち越された。 1220年4月28日、 ソールズベリー伯ウィリアム・ロングスペー(国王ジョン王の異母兄弟)と夫人エラが現在地で新大聖堂の礎石を据えた。 建材の自由石はテフォント・エヴィアス採石場から切り出され、 地下水位が高い湿地の敷地に対応するため、 基礎深さわずか約1.2メートルで築かれた異例の工法が採られた。 建設費は南東イングランドの聖職者団から定額の年次寄進で支えられ、 1258年には身廊・翼廊・聖歌隊席といった主要部分が完成。 38年というスピード建設のため全体の様式が一つに統一されたことが、 中世英国大聖堂のなかで特筆される。 続いて1263年にチャプター・ハウス(司祭会議場)と回廊、 1265年に大聖堂の西ファサードが整い、 1330年には高さ123メートルの大尖塔が完成。 塔と尖塔だけで石材7万トン・木材3000トン・鉛450トンを要する大事業であった。 完成当時は国内3位の高さに過ぎなかったが、 16世紀にリンカーン大聖堂とセント・ポール旧大聖堂の尖塔が相次いで崩壊した結果、 英国一の地位を獲得した。 17世紀には傾きが目立った中央柱の補強をクリストファー・レンが設計、 1790年にはジェームズ・ワイアットが旧ルードスクリーンの撤去や鐘楼解体を含む大幅な内部改装を実施した。 19世紀後半にはジョージ・ギルバート・スコットが天井に中世風の装飾画を施し、 大尖塔を鉄筋で補強するなど構造と意匠の双方に近代の手が入った。 1985年に始まった外部の総合修復プログラムは2023年に完了、 37年間聖堂を覆っていた仮設足場が撤去され、 2008年には奉献750周年が盛大に祝われた。
文化的背景と意義
ソールズベリー大聖堂は、 主要部をわずか38年で完成させたために、 ヨーロッパの中世大聖堂のなかでも最も様式的に統一された記念物として広く知られる。 アーリー・イングリッシュ(ランセット)・ゴシックの全体像が一つの建築で完結する希少例であり、 同時期に進化したフランスのレイヨナン・ゴシックの幾何学的論理性とは異なる、 イングランド独自の自由で軽快な空間構成を後世に伝えている。 1215年にジョン王が捺印したマグナ・カルタの現存4写本のうち最良の一葉を所蔵することは、 法の支配という近代政治原理が宗教建築のなかに生き続けていることを象徴し、 英国憲政史と切り離せない宗教遺産という性格を強める。 大聖堂のチャプター・ハウスの装飾レリーフ群、 1386年製の世界最古級の現役機械時計、 中央扉口の3連アーケード・ポーチとあわせて、 中世イングランドの法・宗教・技術が交差する空間として国際的に評価されている。 また英国最大級の境内クローズ(大聖堂境内)は建築史家ニコラス・ペヴスナーが「イングランドで最も美しいクローズ」と評した景観遺産であり、 周辺のジョージア朝邸宅群とともに、 中世から近世への都市文化の継承を体感できる稀有な空間を成す。
建築的詳細
ソールズベリー大聖堂はアーリー・イングリッシュ・ゴシック様式の代表作で、 ランセット・ゴシックとも呼ばれる、 トレーサリーで分割されない縦長窓が外観の主軸を形成する。 外陣の幅は約23メートル、 身廊の天井高は約25メートルで、 38年の短工期で建てられた統一感ある空間が広がる。 1220年から1225年に築かれた東端部の奥内陣は、 3廊等高のヴォールトを架けた広間で、 そのヴォールトを暗色のパーベック大理石を細く組み合わせた束柱型ピアが支える独特の軽快な構造を持つ。 建材はテフォント・エヴィアス採石場の自由石を主とし、 内装には英国全土の聖堂のなかでも最も多くパーベック大理石を用い、 暗色の柱と明色の壁が織りなす豊かな色彩対比を生み出している。 中央交差部にそびえる123メートルの大尖塔は1330年に完成した英国最高の尖塔であり、 17世紀にはクリストファー・レンが中央柱の変形を補強する設計を行い、 19世紀にはスコットが大尖塔を鉄筋で内部から補強した。 西ファサードは3層構成のアーケード・ポーチと中央扉口の3連アーチを擁し、 三角破風の頂部にキリスト像、 各層に天使から高位聖職者へと階層的に彫像を配置する非論理的な意匠が、 英国建築家の自由な発想を物語る。