カンタベリー大聖堂
カンタベリー · GB
ベケット殉教の聖地、 英国国教会の首座が祈る 1400 年の世界遺産大聖堂
イングランド南東部ケント州カンタベリーに立つ大聖堂は 597 年にアウグスティヌスが創建した英国最古級の教会堂で、 1170 年トマス・ベケットの殉教により中世欧州最大級の巡礼地となり、 1988 年にユネスコ世界遺産に登録された英国国教会の総本山。
ベストシーズン・ベストタイム
ケント州「イングランドの庭園」の新緑、 桜と林檎の花が大聖堂庭園を彩る穏やかな観光好機
★★★★★
18-22 度の温和気候と長い日照、 内陣ガイドツアーやイヴンソング合唱に最適な季節
★★★★★
石造建築と紅葉のコントラスト、 観光客減少で内陣・宝物見学が空く撮影好機
★★★★☆
クリスマス・キャロル礼拝が大聖堂全体で開催、 ライトアップされた身廊と聖歌隊が幻想的
★★★★☆
見どころ TOP 3
1.ベケット殉教の地と現代の祭壇
北西翼廊の「殉教の地」は 1170 年 12 月 29 日にヘンリー 2 世の騎士 4 人がトマス・ベケットを斬殺した場所で、 1986 年に 448 年ぶりの新祭壇と十字+血染剣の彫刻が設置されている。
祭壇背後の壁面に映る剣のシルエットを低位置から正面で
2.ペルペンディキュラー身廊と石柱の天井
1377-1405 年にヘンリー・イェヴェルが設計したペルペンディキュラー・ゴシック様式の身廊は柱礎から扇形のリーン・ヴォールトまで途切れず昇り、 英国独自のゴシック様式の最高峰として欧州随一のスケール感を実感できる空間となる。
西扉から東を望む中央通路、 朝の斜光が石柱を照らす時間帯
3.ベル・ハリー・タワーと英国最古級の外観
1493-1505 年に完成した高さ 72 メートルの中央交差塔ベル・ハリー・タワーはペルペンディキュラー期英国ゴシックを代表する優美な石塔で、 全長 160 メートルの石灰岩外観と並ぶ大聖堂のシルエットは欧州遺産巡りの白眉となる。
西側クライストチャーチ門越しに塔をフレーム内に納める構図
物語・伝説
こんな人におすすめ
現地で知るべき豆知識
- 1.毎日夕方 17:30 のイヴンソング(夕の祈り)は入場無料で聖歌隊の合唱を聖堂内陣の最前列で聴ける希少な体験、 観光客が引いた時刻に大聖堂本来の祈りの空間を体感する最良の機会となる
- 2.トリニティ礼拝堂の 12 世紀「ベケットの奇跡の窓」全 8 面は英国最古級のステンドグラスで、 2018 年に大規模修復を完了し色彩が蘇った中世美術の至宝、 北側通路から逆光気味の午後早めが鑑賞好機
- 3.クリプト(地下聖堂)は大聖堂内で最古の 11 世紀ノルマン建築が残る空間で、 元はベケットの墓所であった場所、 1576 年からユグノーのフランス語礼拝も続く隠れた歴史層が体感できる無料エリア
訪問情報
- アクセス
- ロンドンのセント・パンクラス駅から高速鉄道で約 55 分、 カンタベリー・ウェスト駅下車。 駅から大聖堂まで徒歩約 12 分。 ヒースロー空港から鉄道乗継で約 2 時間 30 分。
- 所要時間
- 本堂で 2 時間、 クリプト・回廊込みで 3 時間が目安。
- 予算目安
- 大聖堂入場 大人 17 ポンド前後、 イヴンソング無料。 ガイドツアー別途 7 ポンド。 (2024 年時点、 公式サイトで確認)
周辺観光
徒歩 10 分の聖オーガスティン修道院 (世界遺産同時登録、 597 年創建の英国キリスト教発祥地)、 徒歩 15 分の聖マーティン教会 (4 世紀ローマ時代起源、 英語圏最古の現役教会堂)、 徒歩 5 分のカンタベリー旧市街の中世街並みと『カンタベリー物語』展示館。
詳しく知る
時間のある方向けの詳細情報。
年表
- 597年
アウグスティヌス創建
教皇グレゴリウス 1 世の命でアウグスティヌスがケント王エゼルベルトの許可を得てイングランド最古級の大聖堂を創建する
- 1011年
エルフェア殉教
デーン人襲撃で大司教エルフェアが捕囚され翌年グリニッジで殉教、 カンタベリーの 5 人の殉教大司教の最初となる
- 1070-1077年
ノルマン再建
ノルマン征服後の最初の大司教ランフランクがロマネスク様式での全面再建を主導、 ノルマン朝英国の宗教中心となる
- 1170年
ベケット殉教
12 月 29 日にヘンリー 2 世の騎士 4 人が大司教トマス・ベケットを北西翼廊で殺害、 中世欧州最大級の巡礼地への転機となる
- 1174-1184年
初期ゴシック再建
火災後にフランス人サンスのギヨームが初期ゴシック様式で内陣を再建、 トリニティ礼拝堂と聖トマスの聖堂が完成する
- 1220年
聖遺物移送
ベケットの遺骨が地下墓所からトリニティ礼拝堂の黄金聖遺物匣に移送され、 巡礼の最高潮時代が始まる
- 1377-1405年
身廊垂直式再建
巨匠石工ヘンリー・イェヴェルが身廊と翼廊をペルペンディキュラー・ゴシック様式で全面再建、 英国独自ゴシックの頂点となる
- 1493-1505年
ベル・ハリー・タワー完成
高さ 72 メートルの中央交差塔ベル・ハリー・タワーが完成、 ペルペンディキュラー期英国ゴシック塔の代表作となる
- 1538-1539年
ベケット聖堂破壊
ヘンリー 8 世の宗教改革でベケットの聖堂と遺物が破壊・没収され、 修道院も解散して世俗大聖堂に転換する
- 1834年
アランデル塔建替
構造不安だった北西塔を解体し南西塔と対称のペルペンディキュラー様式で再建、 現在の対称的西側正面が完成する
- 1942年
第二次大戦の被害
ベデカー空襲で図書館は焼失したが、 地元防火員の機転で大聖堂本体は奇跡的に被害を免れる
- 1988年
世界遺産登録
聖オーガスティン修道院・聖マーティン教会と一体でユネスコ世界文化遺産に登録、 登録基準(i)(ii)(vi) を満たす
- 2016-2022年
カンタベリー・ジャーニー
総額 3450 万ポンドをかけた屋根・ステンドグラス・来訪施設の大規模修復事業が完了し現在の姿となる
歴史をもっと深く
カンタベリー大聖堂の起源は 597 年、 教皇グレゴリウス 1 世の命でアングロサクソンの教化に派遣されたアウグスティヌスがケント王エゼルベルトの許可を得て創建したことに遡る。 9-10 世紀にはアングロサクソン期の石造大聖堂として拡張され、 1011 年のデーン人襲撃で大司教エルフェアが捕囚・殉教し、 5 人の殉教大司教の最初の犠牲者となった。 1067 年の火災で焼失、 1070-1077 年に最初のノルマン大司教ランフランクがロマネスク様式で全面再建、 続いてアンセルムスとアーヌルフが 12 世紀初頭に内陣を大幅拡張した。 1170 年 12 月 29 日にヘンリー 2 世の騎士 4 人が大司教トマス・ベケットを北西翼廊で殺害、 1173 年に列聖され大聖堂は中世欧州最大級の巡礼地となる。 1174 年 9 月の火災で内陣が焼け落ち、 フランス人建築家サンスのギヨームが初期ゴシック様式での再建を主導、 1179 年の足場転落事故で「英国人ウィリアム」が引継いだ。 1180-1184 年には聖トマスの聖堂を収めるトリニティ礼拝堂と「ベケットの王冠(コロナ)」礼拝堂が増築され、 1220 年に遺骨が地下から移された。 1382 年のドーバー海峡地震で鐘楼が崩落、 14 世紀末から 15 世紀初頭にかけて巨匠石工ヘンリー・イェヴェルが身廊・翼廊をペルペンディキュラー・ゴシック様式で全面再建した。 1493-1505 年に高さ 72 メートルの中央交差塔ベル・ハリー・タワーが完成、 1538 年にはヘンリー 8 世の宗教改革でベケットの聖堂が破壊され遺物は失われた。 1642-1643 年の清教徒革命で聖像破壊、 1834 年に北西塔が現アランデル塔に建替えられた。 1942 年の第二次大戦ベデカー空襲で図書館は焼失したが、 地元防火員の機転で本体は奇跡的に被害を免れる。 1988 年に聖オーガスティン修道院・聖マーティン教会とともにユネスコ世界遺産登録、 2016-2022 年に 3450 万ポンドをかけた「カンタベリー・ジャーニー」修復事業が完了した。
文化的背景と意義
カンタベリー大聖堂は 597 年のアウグスティヌス伝道以来 1400 年以上にわたるイングランドのキリスト教信仰の中心で、 大司教はカンタベリー教区の司牧者であると同時に英国国教会の首座、 そして世界 8500 万人のアングリカン・コミュニオンの象徴的指導者でもある。 1988 年の世界遺産登録は登録基準(i)(ii)(vi) を満たし、 ノルマン期からペルペンディキュラー・ゴシックまでの英国建築史の縮図、 初期ゴシックの導入・展開という建築技術交流の証左、 ベケット殉教とアウグスティヌス伝道という英国宗教史の二大事象との結びつきが評価された。 ジェフリー・チョーサーが 1387 年頃に書き始めた『カンタベリー物語』は大聖堂を目指す巡礼者群像を通じて中世英語文学の頂点となり、 大聖堂は文学史上の聖地としても世界中の読者を呼び続ける。 T.S. エリオット 1935 年の戯曲『大聖堂の殺人』もベケット殉教を主題とし、 教皇ヨハネ・パウロ 2 世 1982 年訪英でも歴史的祈祷が行われた。
建築的詳細
カンタベリー大聖堂は英国建築史の生きた教科書である。 11 世紀ノルマン期に建設された地下クリプトと外周壁の一部、 12 世紀後半に再建された初期ゴシック様式の内陣 (1175-1184 年、 ノルマンディーのカーン産石灰岩+パーベック大理石の柱頭)、 14 世紀末-15 世紀初頭のペルペンディキュラー・ゴシック身廊 (1377-1405 年、 ヘンリー・イェヴェル設計、 異例の高い身廊アーケード+リーン・ヴォールト+ボス装飾)、 1493-1505 年完成のベル・ハリー・タワー (高さ 72 メートル、 イングランド・ペルペンディキュラー塔の代表作)、 19 世紀の北西アランデル塔再建が連続する。 全長 160 メートル、 幅 47 メートル、 中央塔高 72 メートル。 ステンドグラスでは 12 世紀「ベケットの奇跡の窓」 8 面と「祖先の窓」が特筆され、 英国最古級の中世ガラス芸術として 2018 年に大規模修復を完了した。 大聖堂門 (クライストチャーチ・ゲート、 1517 年完成) は精緻な彫刻装飾を持つ西側正面の象徴的建造物である。