ノートルダム大聖堂
ランス · FR
歴代フランス国王25人が戴冠した、 ゴシック建築最高峰のステンドグラスの森
パリ東北東約130kmのランスに立つノートルダム大聖堂は、 816年ルイ1世から1825年シャルル10世まで歴代国王の聖別の地。 シャルトル・アミアンと並ぶ古典ゴシックの傑作で、 1991年に世界遺産登録された。
ベストシーズン・ベストタイム
新緑のシャンパーニュ地方の穏やかな気候と長い日照、 大聖堂周辺のテラスカフェも快適
★★★★★
「Regards sur la Cathédrale」夜間ライトプロジェクションマッピングが上演される最大の見せ場
★★★★★
シャンパーニュ収穫期と重なり、 ぶどう畑と古都を組合せた小旅行が映える穏やかな季節
★★★★☆
クリスマス市と大聖堂のミサが幻想的だが、 ランスは曇天続きの北仏冬で防寒必須
★★★☆☆
見どころ TOP 3
1.西正面ファサードと「微笑みの天使」
3つの大扉口を擁する西正面は、 ゴシック彫刻の頂点と称される彫像群で飾られる。 北扉口左壁の「微笑みの天使(Ange au sourire)」は13世紀フランス彫刻の最高傑作で、 中世彫刻に表情豊かな笑みをもたらした革新作である。
午前の柔らかな順光が彫刻の立体感を引き立てる、 正面広場から見上げ構図で
2.西バラ窓の光と13世紀ステンドグラス
西正面上部の大バラ窓は13世紀半ばに制作された色彩鮮やかな円形ステンドグラスで、 直径12メートルを超える。 第一次大戦で多くが失われたが現存部分は中世ガラスの宝庫で、 後陣にはシャガールの青いステンドグラス(1974年設置)も並存する。
身廊西端から正午過ぎの太陽光で内側から見上げる構図が美しい
3.微笑みの天使の名彫刻と修復史
1914年9月の独軍砲撃で首を失った「微笑みの天使」は、 戦後の徹底修復で1926年に復元された。 戦争の傷を癒す象徴として現在も人々を温かく見守り、 隣接のトー宮殿にオリジナル彫像が保存・展示されている。
北扉口左壁を低い角度から、 表情のディテールを切り取る
物語・伝説
こんな人におすすめ
現地で知るべき豆知識
- 1.夏季 (例年7-8月) の夜には西正面で「Regards sur la Cathédrale」というプロジェクションマッピングが上演され、 中世の彩色を蘇らせる演出は無料で必見である。 開始時刻は日没後、 開催日は公式サイトで確認
- 2.隣接するトー宮殿には大聖堂の本物の戴冠用品・タペストリー・損傷を受けた彫像のオリジナルが展示され、 大聖堂単体より深い理解が得られる。 共通券で組合せる訪問者は多くないが満足度が高い
- 3.ランス市内にはサン=レミ旧大修道院も世界遺産構成資産として残り、 こちらは聖レミの遺骸を祀る11世紀ロマネスクの貴重な聖堂である。 大聖堂から徒歩20分で巡礼可能、 観光客は少なく落ち着いて鑑賞できる
訪問情報
- アクセス
- パリ東駅からTGV直通で約45-50分、 ランス駅(Reims Centre)下車。 駅から大聖堂までは徒歩約10分。 シャルル・ド・ゴール空港からは車で約1時間30分。
- 所要時間
- 大聖堂単体で1時間、 トー宮殿・サン=レミ大修道院含めて半日が目安。
- 予算目安
- 大聖堂入場無料 (塔上ガイドツアー大人約8ユーロ)。 トー宮殿入場 大人約9.5ユーロ。 (2024年時点、 公式サイトで確認)
周辺観光
徒歩2分のトー宮殿は戴冠式準備の宮殿で、 本物の戴冠用品と損傷彫像のオリジナルを展示。 徒歩20分のサン=レミ旧大修道院・聖堂は世界遺産構成資産で聖レミの遺骸を祀る。 シャンパーニュ・カーヴ巡りはTaittinger等が市内徒歩圏に多数。
詳しく知る
時間のある方向けの詳細情報。
年表
- 496年頃
クロヴィスの洗礼
フランク王クロヴィス1世が司教レミギウス(聖レミ)から洗礼を受け、 戴冠式の伝統の原点となる
- 816年
ルイ敬虔王の戴冠
ローマ皇帝兼フランク王ルイ敬虔王が教皇ステファヌス4世によりランスで戴冠、 国王戴冠の地としての歴史が始まる
- 862年
カロリング朝大聖堂奉献
ヒンクマール大司教が皇帝臨席の下、 全長86メートルの新大聖堂を完成・奉献した
- 1210年
前身教会の火災
5月6日の大火災で前身教会が消失し、 現大聖堂の建設計画が始動した
- 1211年
現大聖堂着工
5月6日に現大聖堂の建設が開始され、 内陣のある東側部分から着工された
- 1233-1236年
市民反乱と工事中断
建造費に課された重税に苦しむ市民の反乱が起こり、 一時工事が中断した
- 1429年7月
シャルル7世の戴冠
ジャンヌ・ダルクに導かれシャルル7世が大聖堂で戴冠、 国民的記憶の中心となる
- 1475年
北鐘塔完成
南鐘塔(1445年)に続き北鐘塔も完成し、 大聖堂は4世紀超の建設を経て主要部完成
- 1825年
最後の戴冠式
シャルル10世の戴冠を最後に、 ランスでの国王戴冠式の伝統は終わった
- 1914年9月
第一次大戦の砲撃
19日のドイツ軍砲撃で屋根全体が焼失、 ステンドグラスの約半数と多くの彫像が失われる壊滅的被害
- 1938年
戦後再建完了
建築家アンリ・ドゥヌの主導で20年の再建工事を経て、 一般公開を再開した
- 1974年
シャガールのステンドグラス
画家マルク・シャガールが手がけた青いステンドグラスが後陣に設置され、 新たな名物となる
- 1991年
世界遺産登録
トー宮殿・サン=レミ旧大修道院と共にユネスコ世界遺産として登録された
歴史をもっと深く
ランス・ノートルダム大聖堂の歴史は5世紀初頭、 ニカシウス司教が現在地にコンスタンティヌス帝時代のローマ浴場跡を聖母マリアに捧げる教会として建てた事に始まる。 496年頃にフランク王クロヴィス1世がこの地でレミギウス司教から洗礼を受けた事件が、 後の戴冠式の伝統を生んだ。 816年、 ローマ皇帝兼フランク王ルイ敬虔王が教皇ステファヌス4世によりランスで戴冠し、 818年頃からエッボー大司教と王室建築家ルマウドが古い城壁の石材を用いて新たな大聖堂建設に着手。 862年にヒンクマール大司教が皇帝臨席の下、 全長86メートルの2つの翼廊を持つカロリング朝大聖堂を奉献した。 現大聖堂は1210年5月6日の火災で前身教会が消失したのを受け、 1211年に着工された。 1233-1236年には重税に苦しむ市民の反乱で工事中断したが、 13世紀半ばまでに内陣完成、 13世紀末には西側を除く大半が完成。 百年戦争中の1359-1360年には英国軍の包囲で再び中断したが、 14世紀に西側も完成し、 南鐘塔は1445年、 北鐘塔は1475年にようやく竣工した。 1429年にはジャンヌ・ダルクがシャルル7世をランスへ導き、 7月17日にこの大聖堂で戴冠式が挙行されたことで、 大聖堂は国民的記憶の中心となった。 816年のルイ1世から1825年のシャルル10世まで、 32人の王(現建物では25人)が戴冠の秘蹟を授かった。 フランス革命期(1789-1799)には彫像を中心に破壊が及んだが、 建物本体は奇跡的に大きな損傷を免れた。 1875年にフランス国会が修復予算を可決し19世紀後半の徹底修復が行われたが、 1914年9月19日の第一次世界大戦で独軍砲撃により屋根全体が焼失、 ステンドグラスの約半数と彫像群が失われる壊滅的被害を受けた。 1919年から建築家アンリ・ドゥヌの主導で再建が始まり、 1938年に一般公開を再開。 1974年には後陣に画家マルク・シャガールの青いステンドグラスが設置された。 1991年にユネスコ世界遺産として、 隣接するトー宮殿、 サン=レミ旧大修道院・聖堂と共に登録された。
文化的背景と意義
ランス・ノートルダム大聖堂はシャルトル大聖堂・アミアン大聖堂と並ぶフランス古典ゴシック建築の三大傑作とされ、 1991年のユネスコ世界遺産登録ではトー宮殿(戴冠式の準備宮殿)、 サン=レミ旧大修道院・聖堂(聖レミ崇敬の中心)と組み合わせた「ランスのノートルダム大聖堂、 サン=レミ旧大修道院、 トー宮殿」として登録された。 「微笑みの天使(Ange au sourire)」は13世紀フランス彫刻の最高傑作とされ、 中世彫刻に初めて穏やかな笑みをもたらした作品として美術史上極めて重要である。 国王戴冠の場としての精神的役割は1825年シャルル10世の戴冠を最後に終わったが、 戴冠の聖油を入れた聖アンプール(Sainte Ampoule)は大聖堂の象徴的遺物として現在もトー宮殿に保管されている。 ロッシーニのオペラ「ランスへの旅」(1825年)はシャルル10世戴冠式のために作曲され、 ジョルジュ・バタイユの処女作『ランスの大聖堂』(1918年)はこの聖堂への情熱を綴る。 1959年にはエコール・ド・パリの画家・藤田嗣治がこの聖堂で洗礼を受けてレオナール・フジタを名乗ったことから、 日仏文化交流史にも刻まれる聖地となった。
建築的詳細
ランス大聖堂は典型的な高ゴシック様式の三廊式バシリカで、 全長138.75メートル、 幅30メートル、 身廊中央高38メートルの規模を持つ。 平面は十角形の五辺の半円という初期ゴシックの内陣伝統を引き継ぎ、 不規則平面のシャルトルと対比される。 外観の最大特徴は西正面ファサードで、 3つの大扉口の上にバラ窓と王のギャラリーが配され、 通常のゴシックではタンパン(まぐさ石上の彫刻部)があるべき位置に第二のバラ窓を配し、 彫刻テーマは上部の破風に移されるという独自構成を採る。 ファサードの彫像数は同時代の大聖堂を遥かに凌駕し、 「微笑みの天使」「クロヴィスの戴冠」「聖母マリアの物語」など膨大な彫刻群が壁面を埋める。 内部は古典ゴシックの三層構成(大アーケード・四連式トリフォリウム・クリアストーリー)で、 ピリエ・カントネ(円筒コアに4つの添え柱を持つピア)が四分交差リブヴォールトを支える。 ランス独自の革新はクリアストーリーに採用された「トレーサリー」(六弁薔薇飾りの2つの尖塔アーチ)で、 壁体を排除しステンドグラスの面積を増大させた。 この窓形式が後にゴシック建築の標準となり、 サント・シャペルなど後世に大きな影響を与えた。