サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂
サンティアゴ・デ・コンポステーラ · ES
聖ヤコブの眠る墓所、 巡礼路の終着点に屹立するロマネスクの世界遺産大聖堂
スペイン・ガリシア州サンティアゴ・デ・コンポステーラに立つ大聖堂は、 12使徒聖ヤコブの墓所として1075年から建造された花崗岩のロマネスク建築。 ヨーロッパ三大聖地の一つ、 サンティアゴ巡礼路の終着点として今も世界中の巡礼者を迎える。
ベストシーズン・ベストタイム
緑のガリシア地方が最も美しく、 巡礼路の野花が満開で歩きやすい気候
★★★★★
7月25日の聖ヤコブの祝日と花火大会、 巡礼ピーク時期の高揚感を体感
★★★★☆
夏の混雑が引いた巡礼者で街は静寂、 黄葉と石造りの街並みの調和が美しい
★★★★☆
巡礼者が激減し荘厳な聖堂内部を静かに堪能、 雨は多いが神秘的な雰囲気
★★★☆☆
見どころ TOP 3
1.オブラドイロ広場のバロックファサード
1740年にフェルナンド・デ・カサス・ノボアが完成させた西側ファサードは、 2基の鐘楼と高さ75メートルに及ぶ繊細な石彫装飾が圧巻。 ロマネスクの原本を保護するため後付けされた華麗な意匠で、 巡礼者が最初に対面する象徴的な顔となる。
オブラドイロ広場の南東角から斜め45度の構図で2基の鐘楼を入れる
2.栄光の門 (ポルティコ・デ・ラ・グロリア)
巨匠マテオが1188年に完成させた西側入口の門は、 ロマネスク彫刻の最高傑作とされる。 中央タンパヌムに座すキリストと24人の長老、 200体超の聖人像が花崗岩から彫り出され、 中世彫刻史を塗り替えた傑作として世界遺産価値を体現する。
正面の聖ヤコブ柱を中心に下から見上げる縦構図、 内部は撮影制限あり要確認
3.巨大香炉ボタフメイロの儀式
重さ約53キロの大香炉ボタフメイロが、 8人の引手 (ティラボレイロス) によって身廊上空を時速約68キロで振り回される圧巻の儀式。 12世紀から続く伝統で、 巡礼者の体臭を浄める実用目的から始まった世界最大級の振香炉である。
身廊中央の側廊から望遠で振動の最頂点を狙う、 ミサ時刻要確認
物語・伝説
こんな人におすすめ
現地で知るべき豆知識
- 1.巡礼者ミサは毎日12時と19時30分。 ボタフメイロが振られる日は不定期で公式サイトで前日確認できる。 11時着で正面身廊側の長椅子を確保すれば最頂点の写真が狙える特等席となる
- 2.コンポステラ証明書を得るには徒歩100キロ以上または自転車200キロ以上の巡礼必要。 大聖堂裏の巡礼者事務所で発行し、 ラテン語版は無料、 額装付き有料版も用意される人気の証明書である
- 3.聖年 (ヤコボ年、 聖ヤコブの祝日が日曜の年、 次回は2027年) には聖なる扉ポルタ・サンタが開かれ、 通過すると罪が赦されると伝わる。 通常年は閉鎖されているため聖年の訪問が特別な体験となる
訪問情報
- アクセス
- サンティアゴ・デ・コンポステーラ空港から市バス5番で約30分、 マドリードから高速鉄道AVEで約3時間。 大聖堂は旧市街中心部、 鉄道駅から徒歩約20分。
- 所要時間
- 聖堂内部と博物館で2-3時間、 周辺旧市街散策含めて半日が目安。
- 予算目安
- 聖堂無料、 屋根ツアー大人12ユーロ・博物館12ユーロ前後 (2024年時点)。 詳細は公式サイトで確認。
周辺観光
旧市街石畳のオブラドイロ広場・キンタナ広場、 サン・マルティン・ピナリオ修道院、 ガリシア現代美術センター、 アラメダ公園からの大聖堂遠景、 巡礼者向けの伝統的タパス通りラ・フランコ通りが徒歩圏に並ぶ。
詳しく知る
時間のある方向けの詳細情報。
年表
- 813年頃
聖ヤコブの墓発見伝説
隠者ペラギウスがリブレドンの森で奇跡の光を見て、 イリアのテオドミロ司教が聖ヤコブの墓を再発見したと伝わる
- 829年
最初の礼拝堂
アストゥリアス王アルフォンソ2世の命で墓所に最初の礼拝堂が建造され、 王自ら初の巡礼者となった
- 899年
前ロマネスク教会
レオン王アルフォンソ3世のもとで前ロマネスク様式の教会が建造され、 巡礼地としての発展が始まる
- 997年
アル=マンスールの侵攻
コルドバ・カリフ軍司令官アル=マンスールがガリシアを侵攻、 教会を焼き払うが聖ヤコブの墓と遺物は無傷で残った
- 1075年
現大聖堂建造開始
カスティーリャ王アルフォンソ6世とディエゴ・ペラエス司教のもと、 親方ベルナルドらが現在の大聖堂建造を開始
- 1120年
大司教座へ昇格
教皇カリストゥス2世により大司教座へ昇格、 ヨーロッパ巡礼地としての地位が確立される
- 1188年
栄光の門完成
巨匠マテオが西側入口の「ポルティコ・デ・ラ・グロリア」を完成、 ロマネスク彫刻の最高傑作とされる
- 1211年
大聖堂奉献
レオン王アルフォンソ9世の臨席のもと大聖堂が奉献され、 巡礼路の終着聖堂として公式に機能を開始
- 1740年
オブラドイロ・バロックファサード完成
フェルナンド・デ・カサス・ノボアが西側のバロック様式ファサードと2基の鐘楼を完成させた
- 1985年
ユネスコ世界遺産登録
サンティアゴ・デ・コンポステーラ旧市街全体がユネスコ世界文化遺産に登録された
- 1993年
巡礼路の世界遺産登録
サンティアゴ巡礼路 (カミーノ・フランセス) もユネスコ世界文化遺産として追加登録された
歴史をもっと深く
サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂の起源は9世紀初頭、 隠者ペラギウスがガリシアのリブレドン森林上空に神秘的な光を見たという伝説に遡る。 イリアのテオドミロ司教がこれを奇跡と認め、 アストゥリアス王アルフォンソ2世 (在位791-842年) に報告、 王は墓の場所に最初の礼拝堂を建造し自ら初の巡礼者となった。 829年に最初の教会、 899年にレオン王アルフォンソ3世が前ロマネスク様式の教会を建造したが、 997年にコルドバのカリフ軍司令官アル=マンスール (938-1002年) によって焼き払われた。 ただし聖ヤコブの墓と遺物は無事に残り、 鐘と扉だけが捕虜のキリスト教徒によってコルドバへ運ばれ、 1236年カスティーリャ王フェルナンド3世がコルドバを奪還した際にトレドの大聖堂へ移送された。 現在の大聖堂は1075年、 カスティーリャ王アルフォンソ6世 (1040-1109年) の治世下、 ディエゴ・ペラエス司教の発願で建造が開始された。 フランス・トゥールーズのサン・セルナン教会と同じ設計図に基づき、 ガリシアの花崗岩で築かれた。 親方ベルナルド (兄)、 助手ロベルトゥス・ガルペリヌス、 そして親方エステバンらが工事を率い、 1122年に最後の石が置かれたが、 完全な完成はさらに先となった。 1100年にディエゴ・ヘルミレス大司教が親方エステバンに工事を委託、 1168年には巨匠マテオが西側入口と主身廊聖歌隊席の完成を任された。 マテオは1188年にロマネスク彫刻の最高傑作「栄光の門 (ポルティコ・デ・ラ・グロリア)」を完成させ、 1211年にレオン王アルフォンソ9世の臨席のもと大聖堂が奉献された。 都市は1075年に司教座となり、 1120年には教皇カリストゥス2世により大司教座へ昇格、 1495年に大学が併設された。 16-18世紀のルネサンス・バロック期には回廊増設や付帯施設が続々と追加され、 1740年にフェルナンド・デ・カサス・ノボアが現在のバロック様式オブラドイロファサードを完成させた。 新古典主義期にはアサバチェリア門が増築され、 1985年にサンティアゴ・デ・コンポステーラ旧市街全体がユネスコ世界文化遺産として登録された。
文化的背景と意義
サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂は、 ローマのサン・ピエトロ大聖堂、 エルサレムの聖墳墓教会と並ぶヨーロッパ三大聖地の一つとされ、 中世以降キリスト教世界の主要巡礼地として機能してきた。 「使徒の墓の上に建てられた世界に4つしかない教会」 (バチカンのサン・ピエトロ大聖堂、 インド・チェンナイの聖トマス大聖堂、 トルコ・イズミルの聖ヨハネ大聖堂と並ぶ) の一つで、 キリスト教における極めて稀少な地位を占める。 サンティアゴ巡礼路 (カミーノ・デ・サンティアゴ) はフランス、 スペイン各地から大聖堂を目指す巡礼路の総称で、 1993年に巡礼路自体もユネスコ世界文化遺産に登録された。 大聖堂は1985年に旧市街全体の世界遺産として登録され、 ガリシアの州都としての歴史的中心地となっている。 11世紀以降、 各国の王侯貴族・聖職者・庶民を問わず巡礼者を受け入れ、 ヨーロッパ文化の交流拠点として機能した。 巨匠マテオの「栄光の門」彫刻群は中世ロマネスク彫刻の頂点とされ、 美術史教科書に必ず登場する重要作品である。 1989年・2010年・2011年にローマ教皇による訪問が行われ、 現代でも年間30万人以上が巡礼証明書 (コンポステラ) を取得する活発な信仰地となっている。
建築的詳細
サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂は、 ガリシア産花崗岩を主材とした典型的なフランス系ロマネスク建築で、 全長約97メートル、 身廊高さ約24メートル、 翼廊を含めた平面はラテン十字形をとる。 三廊式バシリカ平面に高い側廊と歩廊を加え、 後陣には放射状の小礼拝堂を巡らせる「巡礼路型」の典型構造である。 トゥールーズのサン・セルナン教会とコンクのサント・フォワ修道院教会と同じ系譜にあり、 大規模巡礼者の動線を円滑にする工夫が随所に見られる。 内部は連続するロマネスク・アーケードと交差ヴォールトで覆われ、 中央交差部にはクーポラを戴く。 西側ファサードのオブラドイロ門は1740年完成のスペイン・チューリゲラ様式バロックで、 2基の鐘楼 (鐘の塔と鳴り物の塔) が高さ75メートルでそびえる。 ファサード裏には親方マテオが1188年に完成させた「栄光の門」が保存され、 タンパヌムに栄光のキリスト、 周囲に黙示録の24人の長老、 200体超の聖人像が彫り出される。 中央柱には聖ヤコブ像、 反対側にはマテオ自身の自画像とされる「サント・ドス・クロケス」が彫られる。 北側のアサバチェリア門は新古典主義、 南側のプラテリアス門は1103年の親方エステバンによるロマネスク様式と、 四方のファサードが異なる時代の様式を示す稀有な構成となっている。