セント・ポール大聖堂
ロンドン · GB
ロンドン大火から蘇った、 クリストファー・レン渾身の英国バロック大ドーム聖堂
ロンドン金融街シティの最高地点ラドゲート・ヒルに聳える英国国教会ロンドン教区の主教座聖堂。 1666年のロンドン大火で焼失した旧聖堂に代わり、 クリストファー・レンが35年を費やして1710年に完成させた英国バロックの最高傑作。
ベストシーズン・ベストタイム
新緑のシティを背景に、 観光客もまだ多くない時期で柱廊撮影に最適。 雨の合間の青空狙い
★★★★★
日照時間が長く夕方21時頃まで明るいため、 ドームのライティング前後ろ両ショットを撮れる繁忙最盛期
★★★★☆
シティの落葉と石造ファサードのコントラストが美しい撮影シーズン。 ピーク観光客が減り混雑緩和
★★★★☆
クリスマス礼拝とキャロル・サービスの厳粛な雰囲気、 ライトアップされた夜のドームが幻想的
★★★☆☆
見どころ TOP 3
1.西正面ファサードと2層柱廊
下層コリント式、 上層コンポジット式の2層柱廊が威風堂々と立ち上がり、 頂きには聖パウロ像、 両脇には2基の鐘楼塔が均整美を成す。 ペディメントには聖パウロのダマスクス伝道の浮彫が刻まれ、 ロンドンを代表する建築美の正面ショット。
聖堂前広場から正対する午前中、 順光で柱列の陰影が際立つ
2.高さ111mを誇る大ドーム
三重構造の大ドームは高さ111m、 1710年から1963年までロンドン最高建築だった象徴。 周囲のシティ・チャーチ尖塔群と共にスカイラインを支配し、 第二次大戦のロンドン大空襲を生き延びた不屈の姿でも知られる。
ワン・ニュー・チェンジ屋上展望台から夕景ショット推奨
3.身廊とドーム下の壮麗な天井画
全長157mの身廊から中央ドームを見上げると、 ジェームズ・ソーンヒルが描いた聖パウロ伝のフレスコ画が広がる。 内陣の木造彫刻はグリンリング・ギボンズによる傑作で、 英国バロック装飾の到達点を体感できる空間。
入場後すぐの中央通路から東向きに、 自然光が差す午前が好機
物語・伝説
こんな人におすすめ
現地で知るべき豆知識
- 1.ドーム内「ささやき回廊」は壁に囁いた声が30m先に届く音響奇跡 (257段)。 さらに上の「石の回廊」(119段)、 「黄金回廊」(152段) からシティ360度の大パノラマを獲得できる
- 2.礼拝参列者は入場無料 (平日朝の聖体礼拝など)。 観光入場は £25 (2024年時点、 公式サイトで確認) だが、 オンライン事前購入で割引、 16時以降のラスト・エントリーは混雑が少なめ
- 3.地下クリプトにはクリストファー・レン、 ネルソン提督、 ウェリントン公爵、 J.M.W.ターナー、 アレクサンダー・フレミング (ペニシリン発見者) ら英国偉人多数が眠る。 レンの墓碑「読む人よ、 記念碑を求めるなら見回せ」が建築家の真骨頂
訪問情報
- アクセス
- ロンドン地下鉄セントラル線「セント・ポール」駅から徒歩約2分。 シティ・テムズリンク駅から徒歩約5分、 ヒースロー空港からはピカデリー線+セントラル線で約1時間。
- 所要時間
- ドーム登頂含めて約2-3時間、 礼拝参加時は別途30-60分
- 予算目安
- 入場料 £25/大人 (2024年、 公式サイトで確認)、 ロンドン市内交通 £3-7、 周辺カフェ £15-25。 オンライン事前購入で割引あり
周辺観光
徒歩約10分の場所にミレニアム・ブリッジ (テムズ川を渡る歩行者橋) があり、 対岸のテート・モダン (現代美術館) と合わせて1日コースに組み込める。 北東にはバービカン・センター (英国最大の文化複合施設)、 南東にはロンドン塔とタワー・ブリッジが地下鉄1本でアクセス可能。
詳しく知る
時間のある方向けの詳細情報。
年表
- 607年
初代聖堂の創建
ケント王エゼルベルトがメリトゥス司教のために木造のセント・ポール聖堂を建立。 これがロンドン教区主教座聖堂の起源となる。
- 1087年
3代目聖堂の焼失
サクソン期の3代目石造聖堂が再び焼失。 これを受けてノルマン人主教モーリスが大規模再建に着手し、 旧セント・ポール大聖堂の建設が始まる。
- 1240年
旧セント・ポール大聖堂完成
全長196m、 中央尖塔158mを誇る中世ゴシックの大聖堂が完成。 中世ヨーロッパ屈指の規模を持ち、 ロンドンの宗教・文化中心地として君臨する。
- 1561年
落雷による尖塔焼失
落雷により旧聖堂の中央尖塔が破壊され、 大聖堂屋根全体に延焼。 エリザベス1世の修復努力も完全には実らず、 屋根のみの応急修理で終わる。
- 1666年9月
ロンドン大火で焼失
1666年9月のロンドン大火で旧セント・ポール大聖堂は完全焼失。 600年以上シティを見守ってきた中世の大聖堂が灰燼に帰す。
- 1675年
現大聖堂の起工
国王チャールズ2世の勅命を受けたクリストファー・レンの設計で、 現在の英国バロック様式大聖堂の建設が始まる。
- 1710年
現大聖堂の完成
35年の歳月を経て、 高さ111mの大ドームを擁する現セント・ポール大聖堂が完成。 設計者レン本人が完成を目撃する稀有な大建築となる。
- 1805年
ネルソン提督の国葬
トラファルガー海戦で戦死したホレーショ・ネルソン提督の国葬が行われ、 地下クリプトの中央に大理石棺が安置される。
- 1940-41年
ロンドン大空襲を生き延びる
ドイツ空軍のロンドン大空襲で大聖堂周辺が壊滅するなか、 ドームが煙の中に立ち続ける写真は「セント・ポールの奇跡」として英国民の不屈の象徴となる。
- 1965年1月
チャーチル元首相の国葬
エリザベス2世女王臨席のもとウィンストン・チャーチル元首相の国葬が執り行われる。 戦時下の象徴的指導者が大聖堂で見送られる歴史的瞬間。
- 1981年7月
チャールズ皇太子とダイアナ妃の結婚式
チャールズ皇太子 (現チャールズ3世) とダイアナ・スペンサー妃の結婚式が挙行され、 世界中で7億5000万人が視聴した世紀の祝典となる。
- 2011年
30年修復事業完了
1990年代から続いていた大規模修復事業 (内外装の煤煙除去・石材補修等) が完了。 創建当時の白い石灰岩の色合いが310年ぶりに蘇る。
歴史をもっと深く
セント・ポール大聖堂の歴史はAD607年、 アングロ・サクソン王国時代まで遡る。 ケント王エゼルベルトが、 メリトゥス司教のロンドン教区主教座として木造の聖堂を建立したのが起源とされる。 この初代聖堂は焼失、 7世紀後半の2代目石造聖堂もヴァイキングの襲撃で炎上、 1087年にはサクソン人による3代目も再び焼失する苦難の歴史を辿った。 1240年、 ノルマン人主教モーリスらの再建によって全長196m、 中央尖塔の地上高158mを誇る「旧セント・ポール大聖堂」が完成、 中世ヨーロッパ屈指の大聖堂として君臨する。 1447年と1561年に尖塔が落雷で破壊され、 エリザベス1世の修復努力も屋根のみに留まる。 17世紀に荒廃が深刻化した旧聖堂に対し、 イニゴ・ジョーンズやクリストファー・レンがゴシックとバロックを折衷した再建案を提示していたが、 1666年9月のロンドン大火 (Great Fire of London) によって旧聖堂は完全に焼失する。 国王チャールズ2世の勅命を受けたレンは、 当初パンテオン風の中央集中式平面を提案するも聖職者の反対で英国伝統の十字形に修正、 1675年に着工し1710年、 35年の歳月を経て現大聖堂を完成させた。 設計者レン本人が完成を目撃した稀有な大建築でもある。 1805年のネルソン提督、 1852年のウェリントン公爵、 1965年のチャーチル元首相、 2013年のサッチャー元首相 — 国葬の舞台として近現代英国史の節目を刻む。 1981年のチャールズ皇太子とダイアナ妃の結婚式は世界中で7億5000万人が視聴した世紀の祝典となった。 1940年のロンドン大空襲では大聖堂周辺が壊滅的被害を受けるなか、 ドームが煙の中に毅然と立ち続ける写真は「セント・ポールの奇跡」として英国民の不屈の象徴となった。
文化的背景と意義
セント・ポール大聖堂は英国指定建造物グレードI (Grade I listed) として最高位の歴史的保護を受けている。 英国国教会ロンドン教区の主教座聖堂 (Cathedral) として宗教的中心地であると同時に、 ウェストミンスター寺院が「王室の菩提寺」と呼ばれるのに対し、 セント・ポールは「市民の大聖堂」と称され、 ロンドン市民にとって都市アイデンティティの核を成す。 1930年代に制定された「セント・ポール・ハイト」と呼ばれる景観条例は、 シティ内の新築建築物がドームのスカイライン支配を損なわないよう高さと意匠を制限する画期的な保護策で、 21世紀の高層ビル建設規制にも継承されている。 1940年代のロンドン大空襲時、 周辺の建物が次々に倒壊する中でドームが立ち続ける写真は「セント・ポールの奇跡」(St Paul's Survives) として英国の不屈の象徴となり、 戦後の国民的記憶を形成した。 1981年のチャールズ皇太子とダイアナ妃の結婚式、 2011年のウィリアム王子聖体礼拝など、 王室儀典の主要舞台としても英国民の集合意識に深く根を張る。
建築的詳細
現大聖堂は英国バロック様式の到達点を示す建造物で、 全長157m、 幅74m、 ドーム頂部までの高さ111mを誇る。 平面は伝統的なラテン十字形を踏襲しつつ、 中央交差部に三重構造の大ドームを冠する独創的な構成。 大ドームは外側に意匠優先の鉛葺き外殻、 中間に構造を担うレンガ造の円錐、 内側にフレスコ画を載せた半球状の内殻という三重構造で、 軽量化と意匠美を両立させたレンの工学的傑作とされる。 西正面ファサードは下層コリント式、 上層コンポジット式の2層柱廊で構成され、 頂部ペディメントには聖パウロのダマスクス伝道のレリーフが彫り込まれている。 両翼の鐘楼塔は左右対称の均整美を成し、 中央ペディメント頂には聖パウロ像が立つ。 内陣の木造彫刻はバロック装飾の巨匠グリンリング・ギボンズによるもので、 オーク材の細密彫りが光を受けて深い陰影を生む。 中央ドーム内側のフレスコ画はジェームズ・ソーンヒルが1715-1719年に手掛けた聖パウロ伝8場面の連作。 ドーム下の「ささやき回廊」(Whispering Gallery) は完全な円形音響構造で、 壁面に向けた小声が30m先の反対側まで届く音響学的奇跡として知られている。