鳥取城
鳥取市 · JP
戦国から幕末まで連なる「城郭の博物館」、 日本唯一の球面石垣に出会う名城
鳥取県鳥取市の久松山に立つ鳥取城は、 標高263メートルの山頂を本丸とする山城と、 麓の天球丸・二の丸・三の丸を組合せた梯郭式平山城。 秀吉の「渇え殺し」の悲劇と、 池田氏32万5千石の藩政を一山に重ねた稀有の城跡である。
ベストシーズン・ベストタイム
桜と石垣・仁風閣のコラボが映える名所、 さくらまつり期間は山麓ライトアップも実施
★★★★★
新緑の久松山登山が涼しく、 山頂からの日本海と砂丘の大展望が最も映える
★★★★☆
紅葉と石垣の対比が美しく、 桜期より人が少なく落ち着いて散策できる
★★★★☆
雪化粧した巻石垣と天守台は神秘的、 山頂への登山は積雪時要装備
★★☆☆☆
見どころ TOP 3
1.天球丸の巻石垣 (日本唯一の球面石垣)
膨らんだ石垣を支えるために江戸後期に積み上げられた半球状の補強石垣で、 全国で鳥取城のみに現存する。 2011年に修復完了し、 滑らかな曲線美と石組み技法の珍しさで「全国唯一の遺構」として城ファンの聖地化が進んでいる。
天球丸下から見上げ、 朝の斜光で曲面の陰影を強調すると映える
2.山上の丸からの久松山頂上絶景
標高263メートルの久松山頂に残る天守台と本丸石垣からは、 鳥取砂丘・日本海・市街地が一望できる360度の大パノラマが広がる。 麓から徒歩約30分の山道は戦国期の登城ルートに沿い、 道中に出丸や見張台の遺構が点在する。
天守台北西角から日本海方向を広角で、 早朝の海霧時が幻想的
3.二の丸石垣と仁風閣の和洋競演
麓の二の丸・三の丸跡には池田氏時代の高石垣と水堀が広く残り、 隣接する明治建築の白亜の洋館「仁風閣(国重文)」とともに撮影する構図は鳥取城ならではの和洋競演。 桜の名所としても市民に親しまれている。
三の丸広場側から仁風閣と石垣を重ねて構図、 春は桜並木と組合せ
物語・伝説
こんな人におすすめ
現地で知るべき豆知識
- 1.麓の天球丸・二の丸エリアは無料で常時開放、 山上の丸まで登るなら歩きやすい靴と水分必須で片道約30分かかる。 山頂の方が観光客が激減し静かに遺構を堪能できる穴場ゾーンである
- 2.隣接する仁風閣(明治40年建造、 国重要文化財)は入館150円で、 鳥取藩主池田家の資料と城跡模型を展示。 城跡見学とセットで歴史を立体的に把握できる必訪スポット
- 3.毎年4月初旬の「久松山さくらまつり」期間は二の丸広場で夜桜ライトアップ実施。 大手門木造復元(2021年完成)の屋根と桜のコラボは撮影者にとって新時代の鳥取城ベストショット
訪問情報
- アクセス
- JR鳥取駅から日交バス循環100円バス「くる梨」緑コースで約8分「仁風閣・県立博物館前」下車。 鳥取駅から徒歩なら約30分、 タクシーで約10分。
- 所要時間
- 麓の二の丸・天球丸で1時間、 山上の丸まで含めて2-3時間が目安。
- 予算目安
- 城跡は無料、 仁風閣150円、 県立博物館180円。 バス片道100円、 食事込みで1人2000円程度。 (2024年時点)
周辺観光
車20分の鳥取砂丘 (山陰海岸ジオパーク・国の天然記念物) は必訪。 隣接する仁風閣(国重文)・県立博物館で池田家資料を補完。 車30分の白兎海岸(因幡の白兎神話の地)、 車1時間の三朝温泉も組合せ可能。
詳しく知る
時間のある方向けの詳細情報。
年表
- 1532-1555年
築城の始まり
天文年間、 因幡守護山名氏が久松山の自然地形を活かした山城として築城したとされる
- 1573年
山名豊国が城主に
尼子残党と結んだ山名豊国の攻撃で武田高信が城を明け渡し、 因幡山名氏の本拠が鳥取城に移る
- 1580年
秀吉の第一次鳥取城攻め
羽柴秀吉の3ヶ月籠城戦の末、 山名豊国が和議により織田信長へ降伏する
- 1581年
渇え殺しと吉川経家切腹
毛利方城主・吉川経家が4ヶ月の兵糧攻めの末、 将兵助命を条件に自害し開城した悲劇の戦い
- 1600年
池田長吉の入封
関ヶ原の戦い後、 池田長吉が6万石で入り近世城郭への大改修を進める
- 1617年
池田光政の大改修
因幡・伯耆32万5千石の大封で池田光政が入府、 鳥取城が大大名にふさわしい規模に拡張される
- 1692年
天守焼失
落雷により山上の丸の2層天守が焼失、 以後天守は再建されなかった
- 1873年
廃城令
明治新政府の廃城令により陸軍省所管となり、 鳥取県の島根県編入後ほぼ全ての建造物が解体された
- 1943年
鳥取大震災
鳥取大震災で天守台北側の石垣が崩落、 現在も修復されないまま残されている
- 1957年
国史跡指定
国の史跡に指定され、 1987年には包囲陣地・太閤ヶ平を含めて指定範囲が拡張された
- 2006年
日本100名城選定
日本城郭協会により日本100名城(63番)に選定、 30年計画の幕末期姿への木造復元事業が始動
- 2011年
天球丸巻石垣修復完了
江戸後期の補強石垣で全国唯一の遺構である天球丸の半球状巻石垣の修復が完了した
- 2021年
大手門木造復元
令和元年11月から3年3月にかけ大手門が木造復元され、 3月13日から一般開放が始まった
歴史をもっと深く
鳥取城の起源は天文年間(1532-1555)頃、 因幡守護の山名氏(山名誠通あるいは但馬山名氏)が久松山の自然地形を活かした山城として築いたことに始まる。 正式に城主が確認できるのは元亀年間の武田高信からで、 高信は因幡山名氏の家臣でありながら下剋上を果たし鳥取城を拠点とした。 1573年(天正元年)、 高信は尼子残党と結んだ山名豊国に城を明け渡し謀殺され、 因幡山名氏の本拠が鳥取城に移される。 1575年(天正3年)の芸但和睦で毛利氏の力が及ぶようになり、 1580年(天正8年)に織田方の羽柴秀吉が第一次鳥取城攻めを行い、 城主・山名豊国は3ヶ月の籠城の末降伏した。 翌1581年(天正9年)、 毛利氏は重臣・吉川経家を新城主として送り込んだが、 秀吉は播磨三木城攻めで実践した兵糧攻めをここでも採用。 周辺の米を高値で買い占め、 城周囲に12キロにわたる包囲陣地「太閤ヶ平」を築いて補給を遮断した。 4ヶ月で城内は飢餓地獄と化し「渇え殺し」と後世に呼ばれる凄惨な戦いとなり、 同年10月25日に経家は将兵助命を条件に切腹し開城した。 開城後は宮部継潤が城代として入り、 山上の丸の近世城郭への改修を進めた。 1600年(慶長5年)の関ヶ原の戦いで宮部長房が西軍に与し改易されると、 池田長吉が6万石で入封し近世城郭として大改修。 1617年(元和3年)には池田光政が因幡・伯耆32万5千石の大封で入府し、 鳥取城は大大名にふさわしい規模に拡張された。 その後池田光仲が入封し12代続いて明治維新を迎えた。 1873年(明治6年)の廃城令で陸軍省所管となり、 1876年(明治9年)に鳥取県が島根県に編入されると不要と判断され、 1877-1879年にかけて中仕切門と扇御殿化粧の間を残しほぼ全ての建造物が解体された。 1957年(昭和32年)に国の史跡指定、 1987年(昭和62年)に太閤ヶ平を含めて指定範囲が拡張、 2006年(平成18年)には日本100名城(63番)に選定された。
文化的背景と意義
鳥取城は戦国時代から幕末期までの築城技術が一つの城地に層をなして残るため「城郭の博物館」と呼ばれる。 戦国期の山上の丸の山城遺構、 安土桃山期の宮部継潤による近世城郭への改修、 池田氏時代の高石垣・水堀・天球丸の球面石垣まで、 約300年の城郭進化を歩いて辿れる点が他城との決定的な差異化要素である。 中でも天球丸の「巻石垣」は石垣の孕み出しを抑えるために江戸後期に積まれた半球状の補強石垣で、 国内で現存例は鳥取城のみ。 2011年(平成23年)5月に修復が完了し、 全国唯一の遺構として城郭研究者と観光客双方の注目を集めている。 1581年の渇え殺しの悲劇は、 秀吉の中国攻めにおける兵糧攻め三大戦例(三木の干殺し・備中高松城水攻め・鳥取の渇え殺し)の中で最も凄惨とされ、 信長公記に記された人肉食の記述は近現代の医学的視点でリフィーディング症候群の可能性を示唆する歴史記録として再評価されている。 城主・吉川経家の銅像が1993年(平成5年)に正面入口に建立され、 渇え殺しの慰霊と城主の覚悟を伝える郷土史教育の中心となっている。 2006年から30年と51億円超をかける幕末期姿への木造復元計画が進行中で、 2021年(令和3年)3月には大手門が木造復元されて一般公開された。
建築的詳細
鳥取城は標高263メートルの久松山頂の山上の丸を中心とする山城部と、 山麓の天球丸・二の丸・三の丸・右膳の丸などの平山城部から成る梯郭式の城郭である。 さらに西坂・中坂・東坂などの尾根筋に戦国期の遺構が散在し、 戦国から近世・幕末までの築城技術が一城に重なる特異な構造を持つ。 山上の丸の天守台は南北約20メートル×東西約19メートルのほぼ正方形で、 城内最大の櫓台。 当初は布勢天神山城から移築したとされる3層天守、 池田長吉時代に強風による歪みを避けて2層に改築。 1692年(元禄5年)の落雷で焼失し以後再建されなかった。 天守台中央部には深さ約2.4メートルの穴蔵があり、 城内で唯一現存していた中仕切門は1975年(昭和50年)に大風で倒壊した後、 同年秋に木造復元された。 麓の天球丸の巻石垣は江戸後期の補強で積まれた半球状の球面石垣で、 上から見ると円形に石が組まれた全国唯一の遺構。 石垣は野面積み・打込接ぎ・切込接ぎが時代別に観察でき、 戦国期の野面と江戸期の切込接ぎの対比が明瞭。 太閤ヶ平の包囲陣地遺構も史跡指定範囲に含まれる。