白神山地
青森県 · JP
8千年続く世界最大級のブナ原生林、 日本初のユネスコ世界自然遺産
青森県と秋田県にまたがる白神山地は、 13万haの山地のうち約1万7千haが原生的なブナ天然林として残る世界最大級の規模を誇る山域。 1993年12月、 屋久島とともに日本で最初のユネスコ世界自然遺産(自然遺産)に登録され、 約8千年前の最終氷期後に形成された純度の高いブナ生態系がほぼ手つかずで残る。
ベストシーズン・ベストタイム
ブナの芽吹きと新緑、 残雪と若葉のコントラストが最も美しい時期
★★★★★
深い緑のブナ林と滝の轟音、 渓流トレッキングの最盛期で青池の発色もピーク
★★★★☆
ブナの黄葉が山全体を金色に染め、 暗門の滝周辺は紅葉のトンネルとなる絶景
★★★★★
豪雪期で核心地域は完全閉鎖、 周辺道路も冬期通行止めとなり一般訪問は不可
★☆☆☆☆
見どころ TOP 3
1.世界最大級のブナ原生林
白神山地のブナは世界最大級の連続面積を誇り、 約8千年前の最終氷期終了後に形成された純度の高い生態系がほぼ手つかずで残る。 樹齢400年級のブナ古木も健在で、 苔むす倒木と若木が交代する自然循環の見本。
雨上がりの早朝、 順光側から望遠で苔と樹皮の質感を切り取ると神聖さが際立つ
2.コバルトブルーの青池 (十二湖)
十二湖の奥にある青池は周囲約100mの小さな池ながら、 水面が深いコバルトブルーに発色する白神西部の絶景。 ブナの落葉が水底に沈殿し、 倒木と青の対比が日に数時間だけ現れる光のショーは「世界遺産の宝石」と呼ばれる。
晴天の午前10時前後、 順光で水面のブルーが最も濃く出る。 デッキから広角
3.三段に落ちる暗門の滝
西目屋村の暗門渓谷にかかる暗門の滝は、 一の滝42m・二の滝37m・三の滝26mの三段瀑布が連続する白神の代表景観。 ブナ林の中の遊歩道を歩いた先に轟音とともに姿を現し、 渓谷の冷気とマイナスイオンが体に染み込む。
新緑期か紅葉期に滝壺レベルから縦構図で。 露出長め水煙を絹のように描く
物語・伝説
こんな人におすすめ
現地で知るべき豆知識
- 1.核心地域への立入りは森林管理署の入山許可が必要で、 ガイドなし単独入山は事実上不可能。 アクセスしやすい暗門の滝歩道や十二湖散策路、 ブナ林散策道などの「緩衝地域」コースなら入山届のみで歩け、 初訪者にはこちらが現実的である。
- 2.青池の発色は天候と時刻で激変し、 曇天や夕方は単なる暗い池に見える。 晴天の午前10時前後が最も濃いコバルトブルーになり、 鶏頭場の池や沸壺の池とセット散策がベスト。 JR五能線「リゾートしらかみ」と接続する。
- 3.白神山地ビジターセンター(西目屋村)と藤里町世界遺産センター「白神山地学習センター」は無料で必見。 入山前のレクチャー上映と地形ジオラマで全体像を掴めば現地体験が深まり、 マタギ文化や保護運動史も学べる入門スポットである。
訪問情報
- アクセス
- 青森側: JR奥羽本線弘前駅からバスで西目屋村方面 約1時間、 暗門の滝・アクアグリーンビレッジまで便あり。 秋田側: JR五能線十二湖駅から青池まで弘南バスで約15分。 マイカー利用も可だが冬期は通行止め多発。
- 所要時間
- 暗門の滝散策: 半日、 十二湖青池散策: 半日、 主要スポット周遊: 1-2日
- 予算目安
- 入山自体は無料、 ガイドツアー6千-1万5千円、 公共交通片道2千-4千円。 宿泊込みで1万5千-3万円が目安。
周辺観光
弘前公園(弘前城・桜まつり)、 津軽藩ねぷた村、 鶴の舞橋、 不老ふ死温泉、 千畳敷海岸、 大間越国道沿いの五能線「リゾートしらかみ」絶景路線、 アクアグリーンビレッジANMON、 アオーネ白神十二湖などが半日-1日圏内。
詳しく知る
時間のある方向けの詳細情報。
年表
- 約8千年前
ブナ林の成立
最終氷期終了から2千年後、 純度の高いブナ林が白神山地に定着。 第四紀の大陸氷河を経験しなかった日本ならではの原形を保つ森が形成された。
- 江戸時代
津軽藩の林制
目屋の沢などは津軽藩の薪炭材供給基地として一部利用されたが、 藩による厳しい林制で大規模伐採は抑えられ原生林の多くが温存された。
- 1741年
加護山炭役所設置
寛保元年、 秋田側の加護山(旧二ツ井町)に炭役所が設置され、 後の安永3年(1774)には加護山銅吹分所も置かれて精銅で大量の木炭が使われた。
- 1978年12月
青秋林道計画始動
「青秋県境奥地開発林道開設促進期成同盟会」(野呂田芳成会長)が結成され、 ブナ伐採を伴う林道建設計画が動き始めた。
- 1982年8月
林道工事着工
青秋林道の秋田工区(1日)、 青森工区(12日)が相次いで着工。 ブナ原生林の伐採が現実の脅威となり、 市民の保護運動が本格化した。
- 1983年1月
保護団体結成
「白神山地のブナ原生林を守る会」が秋田県で結成され、 全国規模の反対運動の中核となった。 マタギ集落とも連携した署名運動が広がった。
- 1986年11月
秋田側工事中止
青秋林道の秋田県側工事がストップ。 反対運動の最初の決定的勝利となり、 青森県側の運動にも勢いを与えた。
- 1987年11月
知事の見直し発言
1万3千余筆の異議意見書が青森県農林部に提出された翌日、 北村正哉青森県知事が青秋林道建設の見直しを発言。 計画破棄への流れを決定づけた。
- 1990年3月
森林生態系保護地域指定
林野庁が白神山地を森林生態系保護地域に指定。 青秋林道の打ち切りが確定し、 国による保護体制の整備が本格的に始まった。
- 1993年12月
世界自然遺産登録
屋久島・法隆寺・姫路城とともに、 日本で最初のユネスコ世界遺産として登録。 自然遺産としては屋久島と並ぶ日本初の指定となった。
- 2015年10月
ニホンジカ初撮影
西目屋村のセンサーカメラが遺産地域内で初めてニホンジカを撮影。 翌2016年には周辺6市町村で46頭が目撃され、 生態系への影響が懸念された。
歴史をもっと深く
白神山地の歴史は人類との関わりよりはるかに古く、 約9000万年前の中生代白亜紀の花崗岩を基盤とし、 2000-1200万年前の海底火山活動による堆積岩と貫入岩で大半が構成される。 約8千年前、 最終氷期終了から2千年後にブナ林が成立し、 第四紀の氷河期に欧米のブナ林が大陸氷河で死滅したのに対し、 大陸氷河を経験しなかった日本では生物多様性を維持したまま北日本に再北上できたため、 白神は北極第三紀植物群の原形を留める稀有な森となった。 江戸時代の津軽藩政期、 目屋の沢など一部は薪炭材の供給基地として利用されたが、 厳しい林制で大規模伐採は抑えられた。 1741年(寛保元年)、 秋田側の加護山(旧二ツ井町)に炭役所が、 1774年(安永3年)には加護山銅吹分所が設置され精銅で大量の木炭が使われた。 明治から昭和にかけては大臼鉱山・八助鉱山・水沢鉱山などが操業し、 製炭・森林軌道敷設・牛の放牧なども行われた。 1970年代にブナが楽器材として注目され伐採計画が浮上、 1978年12月に「青秋県境奥地開発林道開設促進期成同盟会」が結成され、 1982年8月に秋田工区・青森工区が相次いで着工した。 これに対し1983年1月、 秋田県側で「白神山地のブナ原生林を守る会」が結成され、 1985年6月の「ブナ・シンポジウム」(秋田市)を経て反対運動が全国化、 1986年11月に秋田県側工事ストップ、 1987年11月には異議意見書1万3千余筆が青森県農林部に提出され翌日、 北村正哉知事が「青秋林道建設の見直し」を発言した。 1990年3月、 林野庁が白神山地を森林生態系保護地域に指定して林道計画は完全に打ち切られ、 1993年12月、 屋久島とともに日本初のユネスコ世界自然遺産に登録された。
文化的背景と意義
白神山地は1993年(平成5年)12月、 屋久島・法隆寺地域の仏教建造物・姫路城とともに日本で最初のユネスコ世界遺産(自然遺産)に登録された。 登録基準(9)「陸上、 淡水、 沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、 生物学的プロセスを示す顕著な見本」が適用され、 「人の影響をほとんど受けていない原生的なブナ天然林が世界最大級の規模で分布」と登録理由に明記された。 範囲約16,971ha(169.7km2)のうち、 中央部の核心地域(10,139ha)と緩衝地域(6,832ha)に分かれ、 核心地域は開発を一切行わず現状のまま保護される厳格な保全方針が敷かれている。 文化的には東北のマタギ(伝統的山猟師集団)が古来この山地で生活し、 自然との共生倫理を体現してきた。 世界遺産化で禁猟区指定が広がり、 マタギ文化の継承が課題となる側面もある。
建築的詳細
白神山地は自然遺産で、 地質・地形・植生・保護施設が物理構造を成す。 基盤は9000万年前の白亜紀花崗岩、 上に2000-1200万年前の海底火山活動による堆積岩(凝灰岩・砂岩)と貫入岩(流紋岩・石英閃緑岩)が重なる。 標高300-1243m(向白神岳)で急峻な谷が人を遠ざける。 約13万haのうち1万7千ha(169.7km2)が世界自然遺産地域、 青森県側74%。 核心地域は開発禁止・立入森林管理署長許可制、 緩衝地域が外側を囲む二重保全。 植生は約8千年前形成の高純度ブナ林が主体、 540種超の植物にカツラ・ハリギリ・アサダの大木と下生えチシマザサ。 動物4000種超、 鳥類87種、 ツキノワグマ・カモシカ・サル、 昆虫2300種。 西目屋村・藤里町の世界遺産センターが入り口、 暗門渓谷・十二湖・二ツ森・岳岱自然観察教育林が散策路となる。