奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島
鹿児島県 · JP
イリオモテヤマネコとアマミノクロウサギが棲む、亜熱帯の生きた進化の証
鹿児島県の奄美大島・徳之島と沖縄県の沖縄島北部・西表島の4島からなる世界自然遺産。 約200万年前に大陸から隔離されて以来、固有種の宝庫として進化を続ける亜熱帯雨林の生態系を、 2021年に日本5番目の自然遺産としてユネスコが評価した。
ベストシーズン・ベストタイム
新緑のマングローブと固有種の繁殖期、 雨も穏やかで野生動物観察の絶好機
★★★★★
シュノーケリングのベスト期だが台風と猛暑、 早朝・夕方のトレッキングに限定推奨
★★★☆☆
台風シーズンが落ち着き気温も下がる、 ナイトツアーで固有夜行性生物が活発な穴場期
★★★★☆
気温20度前後で快適、 渡り鳥観察と人混みのない静かな森歩きが楽しめる
★★★★☆
見どころ TOP 3
1.西表島のマングローブ原始林を漕ぐ
仲間川・浦内川流域に広がる日本最大級のマングローブ林。 オヒルギ・メヒルギ・ヤエヤマヒルギが密生する水路をカヤックで遡上すると、 干潮時には根が露出した「呼吸根」の森が現れ、 亜熱帯生態系を間近で体感できる。
干潮の朝、 仲間川の上流から下流を望む構図で広角レンズ
2.奄美の金作原原生林トレッキング
奄美大島中央部の金作原(きんさくばる)は、 樹齢130年級のイタジイやヒカゲヘゴが鬱蒼と茂る亜熱帯照葉樹林の代表地。 アマミノクロウサギの生息域でガイド同行が必須、 シダ類と巨大な気根が織りなす「ジュラ紀的風景」が広がる。
曇天の午前中、 ヒカゲヘゴを見上げる縦構図がドラマチック
3.やんばるの森の固有種スポット
沖縄島北部・国頭村のやんばる(山原)は、 ヤンバルクイナ・ノグチゲラなど飛べない/極小数の固有鳥類が棲む亜熱帯多雨林。 大石林山の奇岩と熱帯カルスト地形、 比地大滝のシダの森が、 「東洋のガラパゴス」と称される進化の舞台を凝縮する。
早朝、 比地大滝の遊歩道で逆光のシダを透かす
物語・伝説
こんな人におすすめ
現地で知るべき豆知識
- 1.西表島の仲間川・浦内川のマングローブカヤックは大潮の干潮前後が最良。 潮見表で2-3時間前を狙えば呼吸根が露出した「森の根の迷宮」を直接歩ける、 ガイドツアー予約は前日まで可能。
- 2.金作原原生林は2021年から入林ガイド同行が必須。 認定ガイドツアーでないと立入不可となり、 名瀬市内の業者経由で1人5000円程度から半日コースが組める、 雨上がりの早朝が一番動物が出る穴場時間帯。
- 3.ヤンバルクイナ観察は国頭村奥間のヤンバルクイナ生態展示学習施設「クイナの森」が穴場。 飼育下のキョンキョンを至近距離で観察でき、 野生個体の出没情報も地元スタッフから直接聞ける、 ロードキル多発路線も教えてくれる。
訪問情報
- アクセス
- 奄美大島は那覇空港または鹿児島空港から空路。 西表島は石垣港から高速船で約40-45分。 沖縄島北部やんばるは那覇から車で約2時間。 各島でレンタカー必須。
- 所要時間
- 各島1-2泊、 全4島周遊なら最低1週間以上が目安。
- 予算目安
- マングローブカヤックツアー1人6000-12000円、 ガイド付きトレッキング半日5000円から、 宿泊1泊1万円前後 (2024年時点)。
周辺観光
石垣島の川平湾と石垣島鍾乳洞は西表島とセットで石垣空港経由で組み合わせ可能。 沖縄島北部やんばる地域は古宇利島や美ら海水族館と車約1時間圏で立ち寄れる。 奄美大島ではホノホシ海岸の奇岩や黒糖焼酎蔵元巡り、 加計呂麻島の集落散策も好評で島時間を満喫できる。
詳しく知る
時間のある方向けの詳細情報。
年表
- 約200万年前
大陸から島嶼隔離
更新世初期(約200万-170万年前)に琉球弧が大陸から切り離され、 アマミノクロウサギ等の遺存固有種が独自進化を始める
- 1965年
イリオモテヤマネコ発見
戸川幸夫が西表島で標本を確認し新種記載、 「世界の動物学界の20世紀最大の発見」と報じられた希少種
- 2003年
候補地選定
環境省・林野庁の検討会が知床・小笠原と並び「琉球諸島」を世界自然遺産候補地に選定
- 2013年1月
暫定リスト記載決定
世界遺産条約関係省庁連絡会議で「奄美・琉球」を暫定リストに掲載することが決定
- 2016年2月
暫定リスト正式掲載
推薦対象を奄美大島・徳之島・沖縄本島北部・西表島の4島と明確化して再申請、 ユネスコ暫定リストに掲載
- 2016年9月
やんばる国立公園指定
沖縄島北部・国頭村・大宜味村・東村にまたがるやんばる国立公園が新規指定、 西表石垣国立公園も同年3月に西表島全域に拡大
- 2017年3月
奄美群島国立公園成立
奄美大島・徳之島に喜界島・沖永良部島・与論島を加えた奄美群島国立公園が成立、 保護体制の整備が進む
- 2018年5月
IUCN登録延期勧告
推薦範囲の連続性や北部訓練場返還地の扱いを理由に「登録延期」勧告を受け、 政府は推薦を取下げ
- 2018年9月
推薦区域の修正
北部訓練場返還地約2800ヘクタールを推薦区域に追加、 登録基準を生態系から生物多様性(x)単独に絞る方針へ
- 2019年2月
再推薦提出
修正された推薦書を政府が世界遺産センターへ提出、 IUCN現地調査が同年10月に実施される
- 2021年7月26日
世界自然遺産登録
オンライン開催の第44回世界遺産委員会拡大会合で登録決定、 日本5番目の自然遺産として人類の宝に
歴史をもっと深く
奄美大島・徳之島・沖縄島北部・西表島の自然遺産登録運動は2003年(平成15年)に始まる。 環境省と林野庁が共同設置した「世界自然遺産候補地に関する検討会」が、 知床・小笠原諸島と並んで「琉球諸島」を推薦候補に選定したことが起点であった。 知床(2005年)と小笠原(2011年)が先行登録される中、 琉球諸島は地権者合意や米軍北部訓練場の存在で難航し、 2013年(平成25年)1月に「奄美・琉球」として暫定リスト掲載が決定。 推薦範囲を緯度経度のみで示したため一旦記載保留となり、 同年12月に対象地域を奄美大島・徳之島・沖縄本島北部(国頭村・大宜味村・東村)・西表島の4島と確定した。 2016年(平成28年)2月に再申請して暫定リスト掲載、 同年3月に西表石垣国立公園が西表島全域に拡大、 9月15日にやんばる国立公園が新規指定された。 2017年(平成29年)3月7日には奄美群島国立公園が成立し、 同年2月の推薦書提出時にユネスコの要請で正式名称を「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」と地域明示型へ変更した。 2017年10月のIUCN現地調査では推薦範囲の連続性欠如や北部訓練場返還地の扱いを理由に2018年5月に「登録延期」勧告を受け、 推薦取下げ。 2018年6月に北部訓練場返還地の約3700ヘクタールがやんばる国立公園に編入、 9月には科学委員会が推薦区域に約2800ヘクタールを追加し登録基準を生態系(ix)から生物多様性(x)に絞ることを決定。 2019年(令和元年)再推薦、 同年10月のIUCN現地調査を経たが新型コロナウイルス禍で第44回世界遺産委員会が延期となり、 オンライン開催された2021年7月26日の同委員会で登録決定。 日本の自然遺産としては屋久島・白神山地・知床・小笠原に次ぐ5番目となった。
文化的背景と意義
4島の総面積は42698ヘクタール、 約1819種の維管束植物・21種の陸生哺乳類・394種の鳥類・21種の両生類・36種の陸生爬虫類・267種の内陸魚類を含み、 維管束植物の約10パーセント(189種)、 陸生哺乳類の62パーセント(13種)、 両生類の86パーセント(18種)、 爬虫類の64パーセント(23種)が固有種である。 イリオモテヤマネコ・アマミノクロウサギ・オキナワトゲネズミ・ヤンバルクイナ・ノグチゲラ・ルリカケス・リュウキュウヤマガメ・クロイワトカゲモドキ・イシカワガエル等、 IUCNレッドリストの絶滅危惧種を多数含む。 法的保護は奄美群島国立公園・やんばる国立公園・西表石垣国立公園の自然公園法、 生物多様性基本法の生物多様性保全地域(西表島の崎山湾・網取湾は自然環境保全地域)、 文化財保護法の天然記念物、 種の保存法、 外来生物法など多重で構成される。 沖縄島北部の登録範囲南東面では米軍北部訓練場残余地が立入制限により実質的な緩衝地帯機能を果たすという複雑な背景を持つ。 アマミノクロウサギの「ナイトサファリ」、 西表島の「ヤマネコパトロール」など地域参加型の保全活動が世界遺産登録の決め手となり、 国際自然保護連合(IUCN)から評価された。