ナスカの地上絵
イカ県 · PE
上空からしか全容が見えない、紀元前の砂漠に刻まれた巨大な謎の絵画群
ペルー南海岸イカ県のナスカ台地に広がる、紀元前200年から西暦800年頃に古代ナスカ文明が描いた地上絵群。動植物・幾何学図形・直線が約400平方キロに散在し、1994年に世界文化遺産に登録された人類史最大級の謎。
ベストシーズン・ベストタイム
南半球の乾季で雨が極めて少なく、視界が最良。遊覧飛行の欠航リスクが最も低い理想シーズン
★★★★★
気温が穏やかで日射も和らぐ、観光のピークを外せて快適に飛行体験ができる時期
★★★★☆
乾季入りで雨はほぼなし、ハイシーズン前の比較的空いた時期を狙える穴場月
★★★★☆
南半球の夏で日中は暑く、ごく稀な降雨や霧で遊覧飛行が欠航するリスクが上がる
★★☆☆☆
見どころ TOP 3
1.ハチドリの地上絵 — 一筆書きの代表作
翼を広げた長さ約96メートルの巨大なハチドリ。動物地上絵群の中で最も有名で、嘴から尾まで一本の連続した線で描かれている。線の幅は約1メートル、現代の重機を使わず古代人が描いた精緻さに驚嘆する。
セスナ機の窓側右後方席が定番、午前中の斜光線が線の凹凸を強調する
2.クモの地上絵 — 暦法説の核心
全長約46メートルのクモ。マリア・ライヘはこの図形の足の向きが夏至・冬至の太陽の位置に対応すると分析し、地上絵=天文暦説を提唱した。シャチ・サル・コンドルなど70以上の動植物図が点在する中の代表格。
遊覧飛行ルートでハチドリの直後に旋回するポイント、機長のアナウンスを聞き逃さない
3.無数の直線と幾何学図形が織る荒涼台地
ナスカの地上絵の大部分は動物図ではなく、地平線まで真直ぐ伸びる直線と巨大な台形・三角形・螺旋の幾何学図形。総延長は1300キロを超え、暗赤褐色の砂利を取り除いて下層の明色岩石を露出させる工法で描かれている。
ミラドール展望塔 (パンアメリカン高速沿い) からは樹と手の地上絵を地上目線で見られる
物語・伝説
こんな人におすすめ
現地で知るべき豆知識
- 1.遊覧飛行は朝9時から正午までの便が視界・気流ともに最良で、午後は地表加熱による熱対流で機体の揺れが激しくなり乗物酔いしやすいため、酔い止め持参の上で確実に朝一便を予約しておくのがプロ仕様
- 2.セスナ機は片側ずつ全12図形を急旋回しながら見せる構成のため、搭乗前に座席指定 (左右どちらが先に見えるか) を運航会社に確認しておくと、撮影機会と酔い対策に断然有利
- 3.地上アクセスならパンアメリカン高速沿いの「ミラドール展望塔」が低料金で利用可能、樹と手の地上絵を地上目線で観察できる隠れたスポットで、飛行が欠航した日の代替プランにも使える
訪問情報
- アクセス
- 首都リマからナスカまで長距離バスで約7時間、もしくは隣町イカまで車で4時間+乗継。遊覧飛行はマリア・ライヘ・ナスカ空港 (Nasca空港) を発着、市内から車で約10分。
- 所要時間
- 遊覧飛行は30-45分、ナスカ滞在は半日-1日
- 予算目安
- 遊覧飛行 80-130米ドル、空港税別途、リマ-ナスカのバス往復約50米ドル、宿泊1泊30-80米ドル。料金は2024年時点の目安、最新情報は公式サイトで確認
周辺観光
車で約30分のチャウチージャ墓地遺跡 (ナスカ文明の墓地、ミイラ多数)、隣接するパルパの地上絵 (3000年前のパラカス期、観光化されておらず穴場)、車2時間の砂漠オアシス都市ワカチナ (砂丘サンドボード体験) を組合せれば、ナスカ周辺で 1-2日のコース構成が可能。
詳しく知る
時間のある方向けの詳細情報。
年表
- 紀元前400年
パラカス期開始
地上絵のパラカス期 (前400-前200年) が始まる。後のナスカ期に先立つ初期の幾何学図形が現れる。
- 紀元前200年
ナスカ文明本格期
ナスカ文明の本格期 (前200-後500年) が始まり、動植物図形を含む主要な地上絵群が描かれた。
- 西暦525年頃
木杭のC14年代
後にコロンビア大学のストロングが発見する直線終端の木杭の年代 (誤差前後80年)、地上絵年代の根拠となる。
- 1553年
最古の文献記録
スペイン人征服者ペドロ・シエサ・デ・レオンが著書で「街道の標識」として線の存在に言及した。
- 1927年
メヒア・ヘスペ発見
ペルーの考古学者トリビオ・メヒア・ヘスペが地上を歩いていて直線状の地上絵を発見した。
- 1939年6月
コソック動物図発見
アメリカの歴史学者ポール・コソックが上空から鳥の形をした動物の地上絵を発見した。
- 1941年
マリア・ライヘ常住
ドイツの数学者マリア・ライヘがナスカに移住、生涯を地上絵の測量・保護に捧げた。
- 1953年
C14年代測定
コロンビア大学のストロングが直線終端の木杭をC14法で測定し、西暦525年頃と判明した。
- 1994年12月
世界遺産登録
第18回ユネスコ世界遺産委員会で「ナスカとパルパの地上絵」として世界文化遺産に登録された。
- 1998年
ライヘ没
マリア・ライヘが95歳で逝去、ナスカ市に埋葬され今もペルーの英雄として尊敬を集めている。
- 2012年10月
山形大研究所
山形大学がナスカ市にナスカ研究所を開所、坂井正人教授を中心に現地常駐型の調査を始めた。
- 2019年9月
IBM学術協定
山形大学と日本IBMが学術協定を締結、Watson AI による地上絵の自動検出研究を本格化した。
- 2019年
143点新発見
山形大学チームが衛星画像と AI 解析を駆使し、新たな地上絵143点の発見を一挙に発表した。
- 2023年2月
累計733点到達
確認された地上絵が累計733点 (面タイプ683点、線タイプ50点) に達し、調査の進行で更に増加見込み。
歴史をもっと深く
ナスカの地上絵は紀元前200年頃から西暦800年頃にかけて、パラカス文化後期から古代ナスカ文明の時代に描かれたとされる。1953年、コロンビア大学のストロングが直線の終端で発見した木杭をC14法で年代測定し、西暦525年頃(誤差±80年)と判明、これが地上絵年代決定の基礎となった。スペイン人征服者ペドロ・シエサ・デ・レオンは1553年の著書で既に「街道の標識」として線の存在に言及していたが、巨大な動物図形が学術的に発見されたのは航空機時代の20世紀以降である。1927年にペルーの考古学者トリビオ・メヒア・ヘスペが地上から直線を発見、1939年6月22日にアメリカの歴史学者ポール・コソックが上空から鳥の図形を発見、1941年からはドイツの数学者マリア・ライヘ(1903-1998)が現地に常住して測量・保護活動を始めた。1976年にライヘの著書『砂漠の謎』が国際的に注目を集め、1994年12月にユネスコ世界文化遺産に登録された。近年では山形大学が2004年に研究プロジェクトを開始、2012年10月にナスカ研究所を開設し、坂井正人教授のチームが2011年に新地上絵2点、2015年に24点、2019年に143点、2024年までに累計300点超の新発見を報告、確認数は2023年2月時点で733点に達する。2019年9月には日本IBMと学術協定を結びAI解析を本格導入、Watson Machine Learning Community Editionで航空写真を学習させ自動検出モデルを開発した。
文化的背景と意義
ナスカの地上絵は1994年12月17日、第18回ユネスコ世界遺産委員会で「ナスカとパルパの地上絵」として世界文化遺産に登録された。登録基準は(i)(iii)(iv)、人類の創造的才能を示す傑作・現存または消滅した文明の独特な証拠・人類史の重要段階を示す建造物群の3条件に合致する。古代ナスカ文明は2世紀から7世紀にかけて南海岸地方で栄え、その複雑なナスカ式土器文様と地上絵の動物図形には明らかな共通点があり、宗教儀礼・祖先崇拝・天文暦・水信仰など多説が併存する。線タイプの絵にはシャチや鳥が描かれ、天・地・海の水の循環を象徴している説、面タイプの絵は居住地をつなぐ巡礼道に沿って描かれた説、カワチ階段ピラミッド群と関連した人身供儀の儀礼説など、決定打のない謎が逆に世界中の旅行者を惹きつけ続けている。エーリッヒ・フォン・デニケンの古代宇宙飛行士説などオカルト的解釈も20世紀後半に流布したが、ジョー・ニッケルらの実証研究で古代人の単純な道具と計画で十分に作製可能と反証されている。
建築的詳細
ナスカの地上絵の制作工法は、ナスカ台地の地表を覆う暗赤褐色の酸化鉄被覆礫を幅1-2メートル・深さ20-30センチで取り除き、下層の黄白色の酸化していない明色岩石を露出させることで描かれている。線の幅は大部分が約33センチ前後だが、場所により30センチから1.8メートルまで変化する。動物図形の代表的サイズは、ハチドリが長さ約96メートル、サルが約110メートル、クモが約46メートル、コンドルが約134メートル、宇宙飛行士と呼ばれる人型図が約32メートル。線タイプの動物図は平均90メートル前後で一筆書きのように連続した線で描かれ、面タイプの図は赤黒い石を面状に並べる手法で家畜や半人半獣を斜面に表現し、面タイプ平均サイズは約9メートルと小型。総延長は1300キロを超え、最大の幾何学図形は370メートル四方に達する。台地全体の浸食を防ぐ独特の気象条件 (年間降水量約4ミリ、強い南風、岩石の日中加熱による暖気層形成) が、2000年以上にわたる驚異的な保存状態を支えてきた。