屋久島
屋久島町 · JP
洋上アルプスにそびえる屋久杉と苔生す原生林、 日本初の世界自然遺産の島
鹿児島県大隅諸島の屋久島は、 九州最高峰の宮之浦岳(1936m)と樹齢千年を超える屋久杉の原生林を擁する日本初のユネスコ世界自然遺産。 島の90%が森林で、 海岸の亜熱帯から山頂の亜寒帯まで垂直に植生帯が積み重なる稀有な島である。
ベストシーズン・ベストタイム
新緑のシャクナゲと苔の森が映える快適期、 高山部の残雪が消え縄文杉ルートが安定する好期
★★★★★
深い緑とアカウミガメ産卵 (永田浜) のシーズン、 ただし梅雨と豪雨頻発で登山難度が上がる
★★★☆☆
気温が落ち着き登山に最適、 紅葉と澄んだ空気で宮之浦岳からの展望が最も鮮明になる季節
★★★★★
山頂部は積雪と凍結で要装備、 一方で人が少なく沿岸部は温暖で島内観光と温泉巡りに向く
★★☆☆☆
見どころ TOP 3
1.縄文杉 — 樹齢千年級の屋久杉古木
標高1300m付近の屋久杉自生林に立つ最大級の屋久杉。 1966年に上屋久町の役場職員によって存在が広く知られるようになり、 屋久島を象徴する古木として親しまれている。 縄文杉に至るルートは登山道で片道4-5時間を要する本格的な山行である。
縄文杉展望デッキから望遠で全景を狙う、 午前中の柔らかい光が最適
2.苔生す原生林 — 屋久杉と苔の森の景観
白谷雲水峡や荒川登山口周辺の森は、 多雨で湿潤な気候により600種を超える苔が地表・倒木・岩塊を覆い尽くす緑の世界を形作る。 アニメ『もののけ姫』のイメージソースとも語られ、 訪問者を異世界に誘う屋久島ならではの森林景観である。
雨上がりの午前、 太鼓岩・苔むす倒木の俯瞰アングルが幻想的
3.洋上アルプスの島影 — 海から見上げる屋久島
周囲約130km・直径約28kmの円形に近い島は、 海岸から1936mの宮之浦岳まで一気にせり上がる地形を持つ。 鹿児島港・指宿港・種子島からの高速船・フェリー航路から、 海上に屹立する花崗岩の山塊と九州地方最高峰の威容を一望できる。
高速船甲板から望遠で山塊全景を、 早朝の順光時間帯が望ましい
物語・伝説
こんな人におすすめ
現地で知るべき豆知識
- 1.縄文杉日帰り登山は往復約22km・10時間以上に及ぶ本格的な山行で、 早朝4時頃から登り始めるのが定石である。 認定ガイド同行と前夜の島内宿泊は事実上必須と考えてよい
- 2.白谷雲水峡は所要3-5時間で縄文杉ルートより遥かに楽に苔の森を体験でき、 雨上がりの時間帯が最も幻想的な景観となるため、 敢えて雨予報の日を選ぶ写真愛好家も多い
- 3.島の山岳部の年間降水量は8000-12000mmに達するため、 装備の優先順位は防水第一であり、 ゴアテックス上下と速乾シャツの有無が快適な山行の分かれ目になる
訪問情報
- アクセス
- 鹿児島港から高速船トッピーで約2-3時間、 フェリー屋久島2で約4時間。 鹿児島空港から屋久島空港まで航空便で約35分。 島内は路線バス・レンタカーが基本で、 主要登山口へはタクシー・登山バスを利用する。
- 所要時間
- 縄文杉登山日帰りは1日、 白谷雲水峡と海岸観光なら2-3日が目安。
- 予算目安
- 屋久島空港往復2万-3万円台、 宿泊1泊7000-15000円。 縄文杉ガイド1日12000-18000円。 (2024年時点の参考額、 最新は公式サイトで確認)
周辺観光
高速船・フェリーで結ばれる種子島は南西約20kmに位置し、 種子島宇宙センターと組み合わせた周遊が定番。 屋久島町の一部である口永良部島は活火山と原生的な自然を持つ離島で、 日帰りも可能。 鹿児島本土の指宿温泉や桜島も組み合わせ可能で、 鹿児島港経由の南九州周遊コースとして人気である。
詳しく知る
時間のある方向けの詳細情報。
年表
- 約1550万年前
花崗岩の貫入
屋久島中央山岳部に直径約25kmの巨大な花崗岩が貫入し、 後の隆起によって九州最高峰の山体が形成される基盤となった
- 約7300年前
鬼界カルデラ大噴火
南方の鬼界カルデラで大噴火が起こり、 屋久島は火砕流によって島の大部分が覆われたとされる
- 702年
多禰国に編入
『続日本紀』に屋久島が古代の多禰国の一部であった旨が記され、 日本史上の文献に登場する
- 16世紀末
方広寺大仏殿のための木材調査
豊臣秀吉による京都方広寺大仏殿建立の際、 石田三成が島津義久に屋久島の木材資源調査を指示し、 木材が薩南海域から大坂へ運ばれた形跡が残る
- 17世紀
薩摩藩の屋久杉伐採本格化
薩摩藩によるヤクスギの本格的な伐採が始まり、 明治期までに島内の良木のほぼ全てが伐り出される
- 1966年
縄文杉の通称が定着
上屋久町職員によって最大級の屋久杉古木の存在が広く知られるようになり、 後に「縄文杉」の通称が定着する
- 1980年
生物圏保存地域指定
ユネスコのMan and Biosphere計画で屋久島の18958ヘクタールが生物圏保存地域に指定される
- 1985年
宮之浦岳流水、 名水百選選定
屋久島中央の宮之浦岳から湧き出る流水が環境庁の名水百選に選ばれ、 多雨の島の水資源が評価される
- 1993年5月
永田浜ラムサール条約登録
アカウミガメの北太平洋最大の産卵地である永田浜10ヘクタールがラムサール条約登録湿地に登録された
- 1993年12月
ユネスコ世界自然遺産登録
屋久島が法隆寺・姫路城・白神山地とともに日本初のユネスコ世界遺産として登録され、 自然遺産としては国内初の登録となった
- 2007年
日本の地質百選選定
屋久島の花崗岩山地と河川地形が日本の地質百選に選定され、 地質学的価値が再評価された
- 2017年
台風18号で死者発生
台風18号 (Noru) が屋久島を直撃し、 死者1人を含む被害が記録された
- 2023年11月
オスプレイ墜落事故
屋久島近海でアメリカ空軍V-22オスプレイが墜落し、 乗員7人が死亡・1人が行方不明となる事故が発生した
歴史をもっと深く
屋久島の人間活動は縄文時代以来とされ、 6世紀の中国・隋書には「流求国」への遣使記録が残り、 屋久島周辺もその記述圏に含まれると考えられている。 西暦702年成立の『続日本紀』には、 屋久島が古代の多禰国の一部であった旨が記されている。 江戸時代には薩摩藩島津氏の支配下に置かれ、 大隅国の一部として統治された。 屋久杉は強風と多雨の島の自然環境に適応するため抗菌性の高い樹脂を多量に分泌し、 樹齢千年を超える耐久性のある木材として中世以降に建築材・造船材として開発された。 豊臣秀吉による京都・方広寺大仏殿建立の際には、 石田三成が島津義久に屋久島の木材資源調査を指示し、 実際に木材が薩南海域から大坂へ運ばれた形跡がある。 17世紀に薩摩藩によるヤクスギ伐採が本格化し、 明治期までに良木のほぼ全てが伐り出された。 樹齢千年級の巨木は年輪が歪み山中での製材が不可能であったため放置され、 現在も生存しているものが多い。 伐採跡地にはスギの稚樹が成長し、 以来300〜400年を経て美しい二次林を形成しており、 現在は1000年級の巨木や変形木を「ヤクスギ (屋久杉)」と呼び、 二次林の若木を「コスギ」として区別する慣習が定着した。 明治維新後は鹿児島県の一部として行政区画が再編され、 1960年代に島の人口がピークを記録した。 1966年、 大規模な屋久杉古木の存在が広く知られるようになり、 後に「縄文杉」の通称が定着する。 1980年にユネスコのMan and Biosphere計画で生物圏保存地域に指定 (面積18958ヘクタール)、 1993年5月にラムサール条約登録湿地 (永田浜10ヘクタール、 アカウミガメの北太平洋最大の産卵地) に登録、 同年12月に法隆寺・姫路城・白神山地とともに日本初のユネスコ世界遺産として登録された。 屋久島は日本初の世界自然遺産であり、 文化遺産2件と並ぶ4件同時登録は当時の歴史的事業であった。 2017年には台風18号 (Noru) で死者1人が出、 2023年11月には島近海でアメリカ空軍V-22オスプレイの墜落事故が発生し、 乗員7人が死亡・1人が行方不明となった。
文化的背景と意義
屋久島は1980年のユネスコ生物圏保存地域 (Man and Biosphere) 指定、 1993年5月の永田浜ラムサール条約登録、 1993年12月のユネスコ世界自然遺産登録という3つの国際的保護指定を重ねる稀有な島である。 世界遺産登録地は島の中央山岳部・屋久杉自生林・西部林道周辺の107.47平方キロメートル (島面積の約21%) で、 「島嶼に発達した温帯性の遺存林」として古い起源を持つ生態系が評価された。 また屋久島国立公園は島の42%を占め、 海岸線から山頂までの垂直分布が一括して保護対象となる。 アカウミガメの北太平洋最大の産卵地である永田浜は、 海洋生物多様性の象徴として国際的な注目を集めている。 文化的にも屋久島は宮崎駿監督のアニメ『もののけ姫』の森のイメージソースとして語られることが多く、 屋久杉と苔の森は世代を超えて日本人の自然観に影響を与えてきた。 林芙美子が「屋久島は月のうち、 三十五日は雨」と表現した多雨気候も、 文学と観光の双方で屋久島の文化的アイデンティティを形作っている。
建築的詳細
屋久島の「自然構造物」は、 標高0mの海岸から1936mの宮之浦岳まで一気にせり上がる花崗岩の山体と、 そこに育つ屋久杉の古木群によって成立する。 中央山岳部の地質は1550万年前に貫入した巨大な花崗岩で、 隆起と多雨による激しい侵食の長い時間が現在の急峻な山容とローソク岩のような岩塔を形作った。 島は直径約28km・周囲約132km・ほぼ円形の地形を持ち、 1000mから1900m級の山々が連なる姿は「洋上アルプス」と称される。 屋久杉 (Cryptomeria japonica) は標高600m以上に分布する温帯針葉樹林の主構成種で、 樹齢1000年級の古木を「ヤクスギ」、 二次林の若木を「コスギ」と区別する慣習がある。 代表的な個体としては縄文杉・ウィルソン株・弥生杉・大王杉・夫婦杉・三代杉が知られる。 観光インフラとして縄文杉登山道は荒川登山口から往復約22kmのトロッコ軌道跡と山道で構成され、 白谷雲水峡は太鼓岩を経由する3-5時間の周回コース、 ヤクスギランドには樹齢千年級の屋久杉を巡る散策路が整備される。 海岸沿いには島を一周する県道77号と西部林道が走り、 西部林道沿いには世界遺産登録区域の照葉樹林と海岸線が直接接する。